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□バレンタイン企画※
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月希くん視点
――来週は、俺にとって重大な日だった。
世間一般で言う、恋人の大イベント――バレンタインデー、なのである。
……でも、俺は男で、優貴も男で。こういうのどうすれば良いのかよく分からなくて。
委員長にこそっとラインで相談したら、すぐにアドバイスが帰ってきた。
《渡すんだったら、やっぱり手作りの方が良いんじゃない?》
……ぅ……。
俺、クッキーは毎年渡すからさすがにそれじゃだめだよな、と思ってるとそれを見越してか委員長からまたラインが来る。
《クッキーじゃなくて、ちゃんとチョコ使ったお菓子が良いと思うよ?》
……ですよねー。
でも、チョコを使ったものなどあんまり作った事がなくて、味に自信がない。
生半可なものを作っても相手に失礼だろうし……。
《フォンダンショコラとかは? 結構簡単だと思うよ? それに、なんか上品そうだから人気あるよ?》
フォンダンショコラ……
《レシピあるから送ろっか? 私も作った事あるけど簡単だったし!》
その委員長のラインに、さんきゅーと返して息をつく。
……バレンタインデー。優貴と、初めての。
「――――ッ」
……優貴、喜んでくれるかな?
❤ ❤ ❤
やっぱり学校で渡すのは気が引けたし、どうせなら目の前で食べて欲しかった。
そう思って、毎年渡すクッキーを入れた袋を手に持って、優貴やクラスの皆に渡していると、委員長が「……えっ!?」と驚いた声を上げた。
「……え?」
え、なに? なんかおかしいことした???
やらかした!?
そう思いながらも、放課後、優貴と俺の家でチョコを食べるという、毎年恒例になりつつあるこれを、今年も誘うと優貴は「うん」と頷いて、歩き出す。
……あれ、なんか急に緊張してきた……。
……受け取って、くれる……かな……。
そう思ってたら気付いたら家に着いてて、慌てて鍵を取り出す。
「先に部屋に行ってて」
そう優貴に言って、俺は冷蔵庫に入れてあったフォンダンショコラを取り出す。
冷蔵庫の中は、半分近くチョコが入ってる。……失敗するか持っていっぱい買っちゃったとか、絶対優貴に言うもんか……
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