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□翡翠の薔薇 11
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ギャリーside






わっそいがドアノブを破壊している時だった



足を振り下ろしたとき、後ろで扉の開く音がした



まさかと思い振り返る直前、浮遊感…



コートを掴まれものすごい速さで後ろへ引きずり込まれていく



自分の少し前には同じ様にイヴも引きずられている…




イヴの襟を掴んでいたのは細長い、白い腕だった



そこでバタン、と扉が閉まり暗闇の中ぱっとコートを離された







ギャ「…っ」






放り出され、背中を強打した




目を開けると暗闇じゃなくて少し明るい部屋




目の前には扉、引きずり込まれた暗闇が広がっている







ーーーずず…






いきなり暗闇の中からイヴが飛んできた







ギャ「イヴっ!?」





ちょうど自分に向かってくるように飛んできたイヴは何とか無事なようだ




イヴが来た瞬間に勢いよく扉が閉まった





ギャ「イヴ、大丈夫!?」





イ「…大丈夫…、ここどこ…?」






少し明るい部屋には奥に一枚の大きな絵画


その前にテーブルと一冊の本


天井には大きなランプが1つ下がっているだけ





ギャ「…わからないわ」





イ「…わっそいは?」





ギャ「………わからないわ…」






自分とイヴはいきなり何かに引きずり込まれわっそいと離れてしまった



少し落ち着いたとはいえいつもより冷静さが欠けているわっそいを一人にしておくのはまずい…





イ「…早くわっそいの所に行こう」





ギャ「…えぇ……そうね」






わっそいをわざと怖がらせているやつがいる…




ここはわっそいにとっては精神的にとても辛い場所だ…



早くここを出ないと…







ーーーがちゃっ





案の定、扉は固く閉ざされている




それなら早くこの部屋の鍵を開けるヒントを探すべきだ




先ずは本を調べる事にした









ここは本能で動く輩しかいない



でも外はそれを恥だといい隠している



理性や恥じらい、常識とかくっつけて自分の首を絞めるような窮屈な生活を送っているらしいじゃないか


バカだね、そんなことして何になるのさ



そんなバカの中からいいもの見つけちゃった


親や友達、ましてや身内…誰にも必要とされていない可哀相な子


まわりが必要とするのは金


そんな親に捨てられて身内に引き取られても必要とされているのは金


その子に多大な保険金をかけて成人するその前に事故として殺すみたい”








ギャ「・・・・」





…嫌なこと書くわね




特にヒントはなさそうだけど……











可哀相に 可哀相に…



欲しかったのは”安らぎ”だろう?



欲しかったのは”温もり”だろう?



欲しかったのは”愛情”だろう?



なのに求められるのは金だけ…



おぉ…可哀相に…




気に入った


これ、ボクのコレクションにする



ぼくのモノになればキミが求めているもの全てが手に入る…


どう?美味しい話でしょ?



絶対に手に入れてあげるよ




待っててね”







ギャ「…気味悪いわ」






ストーカーの日記を読んでるみたい…




でもこの本の持ち主が自分達をずっと見ている本人なら…






イ「…ストーカー?」






ギャ「………そう思う?」






っていうかこの子からそんなこと言わせるなんて…



大人としてどうなのかしら…







”でも大変大変…


別にこの空間をいじるのはどうってことないからすぐに連れ出せたはいいけど…



窮屈な外で生まれたあの子は他の奴らと同じ様に変なものいっぱいくっつけてる



先ずはそれを剥がすのに苦労するだろう



どうやって剥がせばいいか知らない


剥がせるものなのかわからない


傷付けずに剥がせるか保障はない



悩んだけどすぐにいい考えが浮かんじゃった



傷付いても特に支障はきたさないから問題ない…




あの子はとても怖がりで寂しがりやで意志が強い



あの子が最も怖がっているもの…




暗闇とボクだ



そして寂しがりやだからこの二人を離してしまえば…



そしてあの子は意志が強い



だからそう簡単には剥がせないだろう…



だからそれが面白い



いじめてやるんだ、


羞恥を煽って


啼かせて


離して


怖がらせて


大切にしているものを狙って…


1番大切にしているものを後回しにして



その子の目の前で消していく…



そしてキミの責任だと言ったら…



どう泣いてくれる?



できることなら



”もういやだ”



と泣き喚いてほしい




きっとキミの泣き喚くその姿はさぞかし美しいだろうなぁ…”







ギャ「…嫌なものに目をつけられたわね」





ぽつりと呟いた言葉にイヴは頷いた






イ「この持ち主が狙っているものって…」





ギャ「……可能性は高いわ」







”あー あー…あーあーあー……




なんでこうも邪魔が入ってくるかなぁ…



こんなのボク呼んでないのに



勝手に入ってきた




あんなのいなければ今頃彼女はボクの腕の中にいたはずなのに…




アイツのせいだ




アイツがいるから彼女はボクを見ないんだ




彼女が見ているのはアイツだなんて…




いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう
ボクのものだどこにもいかせない誰にも触らせない見るべきなのはこのボクだけだなのにどうしてだめだ決して渡さない剥がさなければ消さなければ滅してやる刺してやる燃やしてやる解体してやる殺すっ!!!


ボクのものだ
ボクのものなんだ
ボク以外見ちゃいけないキミはボクのもの
キミに権利なんてない全部ボクのものだ”








ギャ「…………」





内容が悲惨である…



悲惨過ぎてもはや言葉さえ出ない






ギャ「……なんなのよ、これ…」





しばらくの沈黙の中、やっと出た言葉はこれくらい



イヴも黙ってしまった



…でもこれで確信に変わった










きっとコイツが狙っているのはわっそい





そして邪魔だから消そうとしているのは…








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