パンドラハーツ short
□in your heart...
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目当ての店から少し離れたところでケビンに待ってもらうことにした
あまり遠くにいるのも危なっかしいと反対していたが(ヒールで)納得させられたケビンは渋々そこで待っている
「さあて、早く終わらせようか」
フランの手を繋いで子ども用品を見渡す
目当ての物をさっさと見つけて足早にケビンの元に戻った
「お疲れー」
声をかけると少し俯き加減で目を伏せていたケビンは顔を上げ少し目を開き驚いた
ケ「…早かったな」
「だって疲れるのイヤだからその前に帰りたいっス」
というのは言い訳で、本当はその紅い眼を未だに忌み嫌う人が多くはないがこういう街中では結構いるから外ではケビンは相当気を遣っている
それに自分もケビンも人気の多い場所が苦手だから早く終わらせて来たのだ
ケ「…何というかお前は……もう少し女性らしくできれば…」
呆れたようにはあ、と息を吐いたケビンにわざと顔をしかめる
「何デス?」
ケ「いや、何でもない。さ、帰ろうか」
馬車の中から見る街は人で溢れかえっている
それを見てよくあの中にいたな、と感心する
そして帰って来た屋敷は馬車の扉を開けただけでも分かる程血生臭かった
シンクレア公爵夫妻の、父と母の棺から離れないフランを宥めているとケビンが身支度をし、部屋を出ようとする
「………」
あぁ…
そうか、もう……契約したんだ
ケビンを止めたい
けど自分も、ワタシも復讐しに一緒に行きたい
けれどフランを置いて行けない
フ「……ねぇケビン、置いて行かないでっ」
何も口に出さなかったワタシのすぐ傍で絞り出された声
振り向くケビン
それだけで充分に胸が締め付けられたのを決して忘れた事はない
フ「わたし…独りになっちゃうよぉっ…」
その言葉に無理に平静を装って背を向けたケビン
ワタシも行きたくて、止めたくて仕方なかったがケビンがフランの事を自分に任せての事だ
ワタシは、何も言えず、ただ小さなフランを強く抱きしめ黒い服の後ろ姿を見つめた
ケビンが出て行った後、シンクレア家と仲の良かった貴族が手を貸してくれしばらく匿ってくれることになった
シンクレア家の生き残りはワタシとフラン、ケビンの三人しかいなかった
…もし、ワタシがココにいなかったらケビンとフランの二人だけだった
本来の通りにいっていたらフランはどうなっていたのだろう
今のように他の貴族に助けられただろうか
数日後、外の状況を見る為フランを屋敷に残して外へ出た
ついでにケビンに関する情報も探すつもりだったが目ぼしい情報もなくシンクレア家を襲った賊の情報さえなかった
屋敷に戻ると使用人達が倒れていた
急いでフランのいる借りている部屋に向かいドアを開けると血溜まりの中で倒れているフラン
その横で恍惚の笑みを浮かべている男
後は、曖昧だが気づいたら男をバラバラにしていた
その中でも、フランを抱きかかえて助けを求めたけど手遅れだった事
新しい小さな棺に絶対に復讐してくると誓ってワタシも出て行った事は鮮明に覚えている
ワタシも出て行った時には紅眼の亡霊の噂は出ていて事件のあった場所を追うように毎日殺し屋や賊を狩っていった
半年間それを続けて奇跡的にケビンに会えた
出て行った時より髪が伸び少しやつれているように見え胸が痛かったけど…嬉しかったよ
今まで起きた事を話していたが、フランの話をする前にケビンの刻印の針が一周してしまい一緒にアヴィスに堕ちた
そこでアリスと会い、ケビンは左眼を、ワタシも大事なものを奪られた
アヴィスから出てケビンとワタシはレインズワース家の管理するアヴィスの扉の前で当時幼かったシャロンとレイムに発見されそこで過ごす
そして今、幸せに生きてきた日常をかけてバスカヴィルと戦闘している
契約したユニコーンと言う奴は願いを刻印の分、つまり12個叶えてくれるが契約者の身体に大きく影響する
髪や眼の色素は抜けて白くなってしまったが左眼には物好きな技術者が特製の赤色のコンタクトを作ってくれたのをつけているから右目を隠すだけで問題ない
…まぁ、もう視力なんてないんだけど、ほら、ビジュアル的に問題無し
だがここ最近じゃ身体が動かなくなってきた
最初は右腕だけだったがバスカヴィルとの戦闘で無理をしたせいかもう両腕も足も言う事を聞かないしついでに耳もやられた
トータルで言うと体動かせない、視力ない、聴覚ない、寝たきりの状態
それをチェインの力を使って使えるようにして過ごすようになった
そんな悪循環な生活一ヶ月も保たないだろうがもう命をかけているんだ今更気にしない
サブリエに着いてからオズ君達と離れてしまった今はザークシーズと共にいる
リーオ、いやグレンがあのアヴィスの扉を開く前に止めなければならない
せめてオズ君達に繋げられるように