パンドラハーツ short

□先負
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あるパンドラからの仕事で今日は忙しく始まった



いつもなら書類ルネットに押し付けて今頃お茶会に参加しているか、ザークシーズと情報集めで出かけるとかしているのに…




「…ふぅー………なんだかなぁ……」




書類をルネットに押し付け終わった直後、部屋に戻ると新たな任務が入った



内容を見れば下町の方にチェインが暴れている、らしい




「…どうせまたしぶとい違法契約者なんだろ?」





身支度整えてさっさとパンドラから出る





ん?身支度?


まさかパンドラの服を着ているとでも?



ご冗談を…、ワタシはーーーーー








「流石首都とは生き生きしたもんだな」





馬車を降りれば朝といえど人はちらほら



特に活発的な雰囲気も感じられなければそれが安全かそうでないか、一目でわかる




下町、流石に首都とは比べてはいけないか



首都もそうだが下町はまた違って貧困者のあつまりとも言われている所がある



そしてここの方が首都より違法契約者は少ない


だがここの違法契約者は皆、一般的な違法契約者とは違うのだ


チェインとは隙をついて人を惑わせる…



違法契約者になるやつは盲目だ


しっかりと目を開けないからそうなる





「……まぁ、ワタシもそうなんだけどよ」




とりあえず相手が昼間からひょこひょこと町を堂々と歩くことはないだろう


裏道を探ってみるか




歩き出そうとした途端、腕を強く後ろに引っ張られた




抵抗する前にきつく抱き締められ、よく知った香り





「…ザークシーズっ!?」




ブ「こんなところで何しているんですか」




「討伐任務だよ、それより何でお前がここにいる?」




ザークシーズの方を見上げると紅い右眼が細められた




ブ「代わりに来ました」




「…どういうことだ?」




ブ「アナタの任務を私が代わりにやりに来たんですよ」




ワタシの驚きの反応をそんなに見たいのか楽しそうに言うがこっちとしてはありがたいもんだから驚きはしない


戦は好きだが任務となると面倒くさくなるだけだった



別に代わることは気にしない



…だが、ひとつ気になることがある





「理由は?」





ブ「今回の任務はアナタには危険だ」




愛しそうに目を細め横の髪を梳いている


今日のコイツは少し様子がおかしい…




「…よくわからないんだけど………」




言葉を遮って突然のキス



からん、と口の中に転がってきたのは飴




”黙って言う事を聞け”、という合図



言葉では言わないが何かと形で伝えてくる



最初はわからずそれでよく喧嘩したもんだな…





「…この辺りで待ってるよ、遅かったらそこの宿にいる」





納得がいかないけど一応退いておくのが策だろうな…




ブ「…良い子だ」




そう言って手に飴を握らせるとさっさとどこかへ行ってしまった





「……自分勝手なヤツ」




そういうヤツは嫌いだ、でもアイツを好きでいる自分も嫌い



昔からずっと変わらないなんて…




「ワタシはどうかしてるよ」




さて、暇潰しに何しようか



アイツが行ってしまった方向を背にした途端に胸のざわつきが止まらなかった






「……ホントに、何の理由が…」




手に握らせられた何個かの飴を見つめていると呟かずにはいられなかった






「…よく当たるんだよ、ワタシの予感ってやつは」




何気なく見上げた空は黒い雲が流れてきていた



とりあえずそれまでに体力くらい温存しとくかな





寂しい商店街へ歩きながら何を食べようかと考えていた





「今日は何の日♪ふっふー♪」



何の感情もこもってないトーンでハミング



もう一度見上げた空はもうほとんど黒い雲に隠れてしまっている



古くから使っている懐中時計と空とを交互に見つめた




「…まだ1時にもなってないというんに………」




いくら何を呟いても歌を口ずさんでも胸のざわつきは消えてくれない



いつもより気分が上がらないまま商店街が見えた



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