Pandora HeartsーLongー


□一騒動
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「……ぃ、おい、しっかりしろ!」


パチリ、と目が覚めた

そして一番に視界に入って来たのは


ーーーケビンの顔、しかもどアップで(←ここ重要



「………うぇっ!?」



びっくりしすぎて変な声が出た
どうしてくれるんだケビン、と文句を言おうとしたけど…
ふと周りを見ると2人の男性が真剣な顔でこちらを見ている

そういえばこの人たちはケビンの知り合いというか友達というかそういう人であったはず…
そうか、名前聞いたな、としばらく考えて思い出す

自分が寝ている間に大変な事でもあったのか


ケ「大丈夫か、どうしたんだ?」





やっと顔をどけたよ、恥ずかしい…!;
またお互いの鼻掠めたからな⁉
お前はワタシを恥ずか死なせる気か‼





レ「いきなり頭を抱えて倒れこんだんですよ、それで痙攣し始めて大変だったんですから」




え、痙攣!?
何それ重体!!(焦
聞いて自分が引くよ!?




ハ「…お嬢さん、いったい何があったんだ?」



そりゃ、皆さんそんな怖い顔になりますよね



「……ぇ、…と⁇;」




とりあえず、謝ろう
何かとんでもない心配かけたから謝ろう




「…、心配かけて……すいませんデシタ」



3人に頭を下げる、すると頭に手を置かれた



「…っ!?」



突然の事にびっくりして肩がはねた



レ「無事でなによりです、本当に心配したんですから」



優しく頭を撫でるその手つきがなんだか兄をもったみたいだと思った



ケ「……落ち着いたら、教えてもらえるか?」


「ん?わかった、」



ケビンにてきとうな返事をしながら昔、父や母に頭を撫でられて嬉しかった思い出を噛み締めていた

少ししてレイピッドは頭から手を離す

もう少し撫でていても良いのに…
撫でてもらうのは好きだからちょっと寂しく思う



「思い出したんデス、この屋敷に来た時のこと」


と言った途端……

ハ・ケ・レ「「「ホントか/本当か/本当ですか⁉」」」



ずいっ、といきなり3人が同時に身を乗り出して来た
ベッドに座っていたケビン、ベッドの前で立っていたレイピッド
その後ろで椅子に座っていたハーバード

3人が一気に前にのめり込んでくるわけだ
ケビンとレイピッドを前に後ろのハーバードの勢いはすごい




ハ「ぉおっ!?」
レ「わぁっ!?」
ケ「なっ…!?」



3人が同時に前に倒れこんでワタシはその下敷きになった

ベッド特有のぼすん、という音を聞いた後すこしの埃っぽさ

少しずつ実感してくる重さ



ケ「……おい、ハーバード!加減と言うものを知れ!」



ご最もだよ、ケビン……重い



レ「全くです!早くどいて下さい、暑苦しい!」



男3人だもんねぇ………重い



ハ「…やっべ、眠くなってきた」



あらら、今日は忙しかったんだね………重い



ケ「ふざけんなっ!」



ケビンだって疲れてんだもんねぇ………重い



レ「寝るなっ、寝たら死ぬぞハーバード!」



ワタシが寝たいんだけど?………重い



「……ぉ…も………ィっ、」





レイピッドとケビンは細身だから2人だったら少しキツイけどまだ問題なかった

でも、さ?ハーバードは見るからにして2人よりお兄さんだし、3人の中で一番筋肉質な体型………

さすがに呼吸が圧迫されるかなあ?
それとね、まだ身体が軋むんだ、まだ腕も痛いしね?
それよりもね?腹の傷が圧迫…されて………



3人がわいのわいの楽しんでいる中で、ワタシはそれどころではない



ケ「……退けっっ!」イラッ



ーーーガッ



ハ「ふぐっぅ!」


レ「やっと退いた………っお嬢さん!?」焦



ケビンが肘でハーバードの鳩尾を殴ったことでハーバードを退け、ケビンとレイピッドも退いた
半分程天に召されかけていたワタシに気付いたケビン達は慌てる



レ「お嬢さん、お嬢さん!大丈夫ですか!?あぁ、なんでことを!お嬢さん!」



心配してくれるのは有難いが、そんなに揺さぶっては逆に死ぬぞ



「……ダ、…ダイジョブ………ダカラ……ユ、ユラサ……ナ…………」


ケ「落ち着けレイピッド、彼女を殺すな」


レ「……はっ」


ケビンが止めてくれなければ完全に生きてはいなかった



ハ「………鳩尾、痛い……」シクシク…



どうやら一番まともなのってケビンらしい…
なんという組み合わせなんだこの3人は………


ケ「…ゴホンッ、……ところでこの屋敷に来たことを思い出したと言ったな」



良かった、逸れていた話が戻ってきた



「えぇ、そうなんda…デス」


レ「本当に良かった…」


ケ「…名前は、思い出したか?」


少しためらい気味に聞いてくるケビン
正直に眉を下げて答えた


「………いいえ、まだ…」


ケ「…そうか、それ以外のことは?」


「……家族や友達の事は覚えていマス、でも、…何故か自分の名前と一部の記憶が無くて……」


そう、あの記憶以外はまだちゃんと覚えているからそこはある程度偽る必要は無いだろう


レ「…ふむ、完全な記憶喪失ではないな
一時的な記憶障害……か」


ハ「なぁなぁ!この屋敷に来たことを思い出したんだろ?チェインのこと教えてくれよ!」キラキラ



ぎくりっ…



身体に不自然な力が入る、汗が背中に流れた
真剣な顔をしながら話していた2人の後ろでうずくまっていたハーバードはいつの間にか復活していたのか

キラキラとした輝きを放つ表情でチェインの事を聞いてくる


ハ「ケビンから教えてもらったぜ!お嬢さん、チェインの能力で俺達を助けてくれたんだってな!ありがとうな、恩に着るぜ!」


左手をずいっと出される
一瞬反応が遅れたが、その手を握り返し苦笑いがでた



「…いいえ、アレはワタシのせいだ……関係のない貴方達まで巻き込んでしまったとんだ迷惑者だ、礼を言われるようなことはしていないんデスヨ?」


レ「何を言いますか!貴方は私の古くからの大切な友を2人も助けてくれたんですよ!?
迷惑者だなんてとんでもない!!」


肩をガシリと掴んですごい剣幕で言うレイピッドに怖気付いてしまうが、一生懸命に自分の言ったことを否定してくれるその優しさに心が温かくなった


「…………そう、デスカ…」


本当に嬉しくて礼を言いたい…情けないことに言えなかった


ハ「なぁ、ところでさお嬢さん あんたのチェインはどんなんだ?」


まだ食い下がるか、ハーバード…説明しにくいからなるべく言いたくないんだけど…


「ぁ、と?ワタシのチェインデスカ?」


どう説明しようか悩んでいると、何やら胸の辺りがざわついた


「………?」


何か変だ、と思った瞬間
逞しい鳴き声を上げ、ユニコーンが出て来た


ハ・ケ・レ「「「!?」」」


「ゆ、ユニコーン!?」


いきなりの登場に反射的につい名を呼んでしまった


ハ「へぇ、ユニコーンって言うのか…すげぇ」


ハーバードはそれを見て感嘆の声


ケ「…一角獣……」


ケビンは眼を細め何かを探るように見つめる


レ「…黒い翼、」


レイピッドは驚きに眼を開き、呆然としながらぽつりと呟いた


ユ「主ヨ、思い出シタか」


ハ「しゃ、喋った!」


「……ぇ、聞こえるの?って言うか普通チェインって話さないの…?;」


ハーバードのまるでチェインが話すことを知らなかったような反応にこっちが驚かされた

確か漫画とかアニメで蟲ーグリムーとかトランプとか…一般のチェインでも話すはず……、と疑問に思う



レ「…思い出したか、とはどういうことでしょう?」


レイピッドがユニコーンを睨みながら問うとユニコーンはその場で頭を下げた



ユ「そレヲ話に出て来タ次第」


「……契約の影響なワケ?」


ふと、思いついた自分の案を言って見たがユニコーンが首を振ったのでが違うようだ


ユ「我が一時的二封じ込メた」


ケ「……何故そんなことを?」


どんな質問が来てもユニコーンは淡々と応える


ユ「我ガ主トはマダ契約シタバかり故、我の能力ーちからーヲ使イコナせン
あノ時大キナ術ヲ休まズ連続で使ッタ結果、主ノ寿命ニ関ワッてしまウほど体力を消費し過ギタ
勝手なガら、寿命ヲ費ヤス代わリに二つノ記憶を必要トサセてもラッた」



"二つの記憶"


聞いてふと出てきた考えが確信のように思えて胸がざわつく



「…………まさか」


ユ「記憶は古ケレば古イ程高イ値が付キ、逆に新シイ記憶ほど値は低い
古い記憶ヲ対価とシ、新しい記憶ヲ一時的ニ封じ込メル事デ寿命ノ代わリトさせてモらッタ」


一瞬、この馬が、ユニコーンが何を言っているのかわからなかった

理解したくないと思考が止まる



「………………」


レ「………そ、れは…?」


ケ「……まさか………」


ハ「………」


ユ「一度は休マレてイたようダガ、まだ足リず影響ガ出てイタとは言エあまり問題ハ無かッタト見た」




一度は休んだが、まだ足りず影響が出ていた…?

もしかして…あの視界が歪んでいたこと…だとしたら……



「…………お前、…知っていたのか……?」




ユ「……イカニモ」




…なんて簡単に言いやがるんだ




「……っざっけんな、このクズがぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」


ハ・ケ・レ「「「!!?」」」




その声は男特有の太いがなり声
突然のその声は”彼女”
シンクレア家最強の騎士と言われているケビンとハーバードでさえ鳥肌が立つほどの殺気が一気に放たれている
大きい眼はさすが一重瞼なのか、細められていて吊上がり
その視線はユニコーンに向けられていて怒りを露わにしている
そのいきなりの変わり様に驚愕する三人


「てめぇ、よくもオレの記憶を対価としやがったな!?」


ベッドから降り、ケビンとレイピッドの脇を一瞬にしてすり抜ける
ユニコーンの頭をめがけ右足で右蹴るが簡単に躱されてしまった


「そこまで体力消費するんならそうと言え!何故言わなかった!?
記憶を無くすくらいなら死んだ方がマシだわ!」


それでも更にその勢いを利用し、一回転しスピードをつけると殴りかかるがこれもひらりと躱されてしまう


「何故出て来る前に一言言わない⁉そこまで脳足りんか貴様はぁ!!」



左で膝蹴り、これもユニコーンは躱す


「それに、あの時見えなかったこと気づいていながら何故説明してくれない!?」


当たらないことにイラつきその頭を掴もうとするがこれも難なく躱される


「ふざけんな!言われねぇと分からんわ!」


そのまま床を蹴り突進して右で殴りかかる
当たる直前にユニコーンは消え身体の中に戻った


「……っ!」


ユニコーンが消え、目の前に見えたのは壁
咄嗟に両腕を前に突き出す
が、壁に当たる寸前のところで左腕をつかまれた
そのまま腕を後ろに引かれる
バランスを崩し後ろから抱き締められた


「…っ、は、離せ!」


いきなり後ろから抱き締められ、過去に一度襲われかけた記憶がフラッシュバック
怖くなって暴れた、とにかく今の状況から逃れたかった


ハ「……落ち着くんだ、お嬢さん」


ハーバードが宥めるが耳に入らない


「やめろ、やめて!離して!嫌だ!」


パニックになり、暴れていると腹や腕の傷が開いて血が滲む



そんな中、ハーバードはその頭に手を置いた



「ひっ…!?」



何かされると身構えた
だが、その手は優しく頭を撫でる


ハ「何もしない、落ち着いてくれないか?
その怒りは分からなくもない、だが今はまだ安静にしていなくてはいけない状態なんだ
傷が開いてしまう、ゆっくりお話を聞くから座ろう、な?」


ゆっくり優しく言われるとどこからか安心を感じさせ、やっと身体の力が抜ける
なぜか不思議と恐怖はなくなってきた


ハ「…歩けるか?」


ゆっくりと頷きハーバードの手を借りてベッドに戻る
ベッドに座る瞬間に足の力が抜けた
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