Pandora HeartsーLongー


□思い出した…
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レインside






ユニコーンと契約した後のことのはず…






「……ぉぃ、……れは………なん………だ?」



「……まぁ、………たくさん……………ら」



「…に……かで……ぇ」






…………………?、
何か、話し声が聞こえる
聞いたことのある声だ………


…誰だろう?





目を開けたかったけど、光が眩しいのと睡魔に勝てず寝た


夢の中に旅立つ直前に柔らかい風に包まれて、その風から優しい緑の匂いが漂い心地よかった



そしてどれくらい寝たんだろうか?
夢の中で夢が浅くなったと分かってきたころ






ーーーバキバキッ





骨を折る様な嫌な音で意識が戻った
でも視界は真っ暗だ

何故か、こんな聞き逃しの出来ない大きな良からぬ音が鼓膜に届いて脳が警戒しろと危険信号を送っているのに、
瞼が重くて目を開けられなかった


夢の中で自分が夢を見ている経験を思い出させた

夢の中で覚めた時の自分は”これは夢なのか”と気付く

そして強い睡魔に襲われて瞼が鉛のように重い、

だいたい疲れすぎたときによく見る夢だ…



今まさに夢の中の夢から意識だけが覚めた状態のように感じた



ただ今はその強い睡魔がない




「……っあら?」




瞼を開けようと擦ってみたり押し上げるなどして何度も試したが開かない





「……どういう、こと…」





ーーーバキンッ、…ドンッ……!







突如ガラスを割るような、次に鈍い音


音を聞いた限り、何かが出て来たのかと考えた





「……ぇ、…あかないんだけどっ」




目が開かない暗闇の中で音だけが聞こえる状況はとても怖い
暗闇は大の苦手なオプションだ

何も”聞こえない”よりも”見えない”というのが一番怖い




視覚のない状況で確認ができない焦りと暗闇というオプション
目が開かないというハプニングに取り乱しそうになるがなんとか耐える


無我夢中で瞼を開けようと目を擦ったり押し上げたりといろいろやっていたら少しずつ重い瞼が上がってきた





「…ぃよっしゃ……!」




何とかゆっくりゆっくりと瞼が上がって目が開いて安堵したのも束の間、




「………!?」




視界がほぼ白くて何も確認出来ない
何度も目をこするがぼやぼやとピントがあったりずれたりと歪み、スポットライトのような強い光を真正面から当てられたように全体的に真白に霞む


そこで夢の続きを思い出した
経験上、これには2つパターンがある

一つ目はそのまま再び自分から夢の中で寝て朝に目覚める

二つ目は無理矢理目を開けて状況を確認しようとするが視界が歪に歪み、太陽かスポットライトを当てられたかのように白く霞んで見えない
そんな中なんとか見えないかとずっと周りを見回しいつの間にか眠りに落ちている


どちらにせよ寝るのだが夢といえど不思議な体験は寝起きが良からず悪しからずと微妙な事だけ理解している


だが今はなぜ自分は起きているのに、睡魔さえこないのに瞼がこんなに重いんだ?


やっと開けられたと思いきや次は視界は使えない

全くもって訳がわからない





「…ちょっ……、見えん…
ユニコーン!ユニコーン!?」




そうだ、と寝る前に契約したユニコーンを思い出して呼んだ




ユ「…何カ御用か?」




すぐにバリトンボイスが聞こえてびっくりした


だが寝る前のことが夢でないと悲しくもあり、その反面自分が今1人ではないという安心感を感じた




「ぇ、どこにいんの⁉;」




すぐ近くに声はするのだが見えないためどこにいるのか全く検討がつかない



ユ「何ヲ言っテオらレるノカ?
我なラ、主ガ乗っテイルであロう」



「……はぁ?」




言われて聴覚と神経を少し集中すれば馬の蹄が地面を蹴る音に風が肌に当たり、髪が揺れる






……そういえば、ユニコーンに乗せてもらったまま寝ていたんだっけ?
それで起きて、あっ!





「ユニコーン、なんか…さっき骨の折れる様な音が聞こえなかった?
そのあと何かが出て来る様なイメージの音も」



ユ「ソノ音の原因なラバ、

ーーーチェインが出テ来た音でハナイか?」



「………………はぁ?チェイン!?
え、じゃあまだここアヴィスなんデスカ!?」





辺りを確認したいが、使えない視界では何も得られない




ユ「今はアヴィスかラ外ノ世界へ向カってイル最中であル
つマりは、アヴィス ト外の世界ノ間ー狭間ーに当タる
コの狭間の空間は、我の能力デ作リ上ゲたもノ故、他ノチェインと道が繋がッてシマうこトもアル
基本入ってシまッタモノはこノ空間に拒マレ消滅すルノだガ、
運良ケレば稀ニつイテ来る奴も居ル」




「へぇ、よくわからんけど……とりあえず…ここはそのアヴィスと外の世界のは、狭間?にいるわけか

そんで、さっきの音が運良く消滅せずにすんでここに迷い込んできたチェインってこと?」




手探りでユニコーンの頭を見つけると撫でてみたくなった



(頭に角生えてるから分かりやすかった、助かったぁ…)




ユ「運良クこの空間ヲ通れた奴にハ続キがアッての、
もし消滅さレなカッタ奴等は皆我等ト行き着ク場所ガ同ジデあル
更ニ我の力ガ染み込ンデイるこノ空間の影響ヲ受けテ強サヲ身につけヨる」


「あー、そっか…確かこの狭間の空間はユニコーンが作り上げたものだから、ユニコーンの力がこの空間に染み込んでいるのか…
チェインの中でも、”チェイン殺しの能力”を持つチェイン離れの力の影響を普通のチェインが受けたら確かに強くなるのも理解できる

いやぁ、強いけど訳のわかんねえ馬だなお前は」



ユニコーンがアヴィスから外の世界に、もしくは外の世界からアヴィスに行く為に使うこの道ー狭間ーについて説明してくれた
ワタシにとってはゲームの設定を説明されているみたいに面白い
ゲームのやり過ぎかこういう設定には理解が慣れている

ただ口では絶対に褒めてやるものか




「あ、そういえばさ。今気づいたんだけど……

ーーーさっきチェインが出て来た音ではないか、とか言ったよね?今どこにいんの?」




瞼が開かなかったり視界が使えなくてパニクりすぎてついうっかり最初に出て来たチェインと思わしき音の存在を忘れてしまっていた




ユ「アのハリネズミなら後ロニおル」




後ろにいると言われて焦った
急いで後ろを確認するがやはりまだ歪み白く霞む視界では何もわからない
だが、神経を少し集中させて見ても今向いている後ろにいる気配は感じられない





「………脅かすな、いないじゃないか
寿命が縮まった」




騙された、と少し怒気を含めて言うと




ユ「我の速サに追い付ケルチェインなド余程ノ奴デナい限り現レ得ないデアロう」


ユニコーンは勝ち誇ったような声で言う





「………つまりは、自分は強いと自慢か」






自慢されてもウザかっただけなので頭を(手探りで見つけて)軽く力を入れて叩く


ユ「サて、モう辿り着クガ……
あのハリネズミト我等ドちラガ先ニ降り立ツのデあろうナ」



「…え?あのチェイン、ワタシ達より随分後ろなんじゃないの?
着く時間もだいぶ遅くなるでしょ?」



ユ「この空間ハあル決メラれタ時間を止まラず走レバ辿り着ケる、
進んダ距離など関係ナイ
ドチらガ先に辿り着ケルカ我にも分かラん」



「ヘェ〜、ナイス・サバイバル・ロードだねぇ…」





ーーーパリンッ




何かを突破したような瞬間の音
イメージとしては見えないけど叩けば簡単に割れる程度の薄いガラスを突破、と言う感じが強い




ーーーなるほど、この空間から出た音か…





風がなくなりユニコーンが止まったと理解した





「ーーーっ!」




瞬間、後ろから殺気が迫って来るのを感じて
ユニコーンに走れ、と口を開く

だが、前に微かな人の気配を感じて試しに手を伸ばすと人らしき感触
反射的にそれを掴んでユニコーンに走れ!、と叫んだ





ーーーズゥゥン…




ユニコーンが走った後に地面が揺れた

少し離れたところから何かがめり込むような音がしたんだな、とやっと理解

すぐにユニコーンは止まり、ワタシは掴んでいたモノを離す




「……眠っ」





いきなりのことで混乱しそうな自分をなんとか冷静を保てと叱咤し平静を装う
欠伸をしながら危ないところだったとわざと呑気に思った

そして、鉄の匂いがした



ーーー………血か?




それは自分の手から香っているようだった
匂いには少しだけ敏感だから手を近づけずともある程度の距離なら分かる

そしてその手は先ほど避ける時に何か人らしき感触を掴んだ手

手離した人の気配の方を見るが、白く霞み歪んだ視界ではわからない


そんな悪い視界が一瞬だけ、中央に広がる白い霞みの周りの歪んだ部分がピントが合って曖昧だが姿を少し確認できた



黒い服に、銀か白の色素の薄い髪…
……長髪で深い傷を負っていてボロボロだ…
体制的にこちらと目があっている(かもしれない…)



「…って、あらら?いきなり可愛い子が重傷で登場?」


長髪と色素の薄い髪だけで勝手に親近感が湧く
だが、可愛いと思ったのは事実(←変態)

誰であろうと人がいるなら混乱していてはいけない、冷静である事を見せなければ後の立場が不利になるかもしれない…



「って言うか、ココ何処さぁ?」



またさっきのように少しでも見えてくれないかと辺りを見回すがもう見えない

役立たずな視界だ、と心の中で舌打ち

ふと、先ほどの避けて来た場所を確認すると殺気が感じられた



ーーーへぇ、なるほどぉ…
何か巨大なネズミの野太い声がこだますから狭間の空間から迷い込んだハリネズミか?
じゃぁ、この子が重傷なのはこいつのせいか……
ハリネズミと言えば確か漫画の最初に出て来た奴か…



「おやぁ?チェインですか、可愛いけど針が痛そう」



だんだんと眠くなってきた、
いけない、ココで寝たらチェインに殺られる


このまま座っていたら寝てしまいそうだ

ユニコーンからすべるように降りて身体を伸ばす



「とりあえず、眠いからさっさと寝れる状況にしちまえばいいか」



物騒な事を…、と思いながらどうでもいいように吐き捨てる



ユ「…主よ、我ヲ使エ」




その声におそらくこっちの目を見て言ってると思うからユニコーンの方を向く




「何かできるの?」


ユ「我ハ、多々のチェインを食ってキた中デ鏡ノ能力を手に入レタ
姿、風景、武器、防具…主ノ思った姿にナロう」


「…なるほど、コピーか
じゃぁ、細身の長剣を頼むよ」



ユニコーンに手を差し出すと、ユニコーンの気配が近づいていることから
ゆっくりと頭を下げているのだろう、と予測する
頭と思わしきモノが手に当たれば次に手に硬くて太い棒状のモノが収まった

左手でなぞり、それを細身の長剣だと確認した



「………すごい、万能っすね」



試しに軽く一振り、
予想以上の軽やかな清々しい音、軽いし風の音からリーチはだいぶある



ーーーいける



剣など持ったことがないのにそう思った


これからチェインと戦うんだ、そう思うと楽しくて仕方がない
知らぬうちに不敵な笑みを浮かべている



「さぁて、It's SHOW TIME」



そのままどうやってチェインを殺そうか考えながら走る


気配が近づいて来たところでそのチェインがデカイことが分かった

まだ殺気が向けられていないことからぼっとしているのだろう
視界のぼやく部分は毒々しい紫っぽい色で埋め尽くされているはずだ

そういう色の棘が背中にあったな、と思い出す

とりあえず邪魔だからこの勢いのまま少しジャンプして棘を斬り落としてこちらに注意を向かせよう、
それで斬り落としたところを蹴って距離をとればいいや

そう考えて軽く飛んだ、


つもりなのだが…



「………異様に、高くないっすか?」



視界のぼやく部分が紫っぽい色ではなく、周りの背景と思わしき明るい落ち着いた色を映していることからかなりの高さを飛んでいると考えざるを得ない

とりあえず、降下して行くので気配に集中させタイミングが来た時に剣を振るう



ーーーザシュッ




獣と鉄の混ざった匂いがする



『ギャァァァァア!!』



チェインの叫びが煩くて鼓膜が破れるかと思った


そのまま斬ったところを蹴って距離をとる


次に殺気が感じられた





標的はワタシに移ったみたい
今、ワタシと向かい合わせになってんのかな?




ーーービュッ



と風を裂くような音が近づく

音を聞いた限りかなりの速さだろう、そう思った時




「………お?」




また一瞬だけ視界のぼやく部分がピントが合い、黒紫の尖った長い爪の一本を映した



「ぅっわ、すっげぇ爪伸びてんじゃん!切れよ、汚ぇ‼」



ーーーこんな長い爪とか雑菌だらけでしょ!?
そんなものが向けられるなんてたまったもんじゃない!





つい暴言を吐きながら反射的に剣を振るい、頭上に飛ぶ


そのまま降下して、気配が近くなった時に剣を思いきり下に突き出す


突き刺した剣を抜いて少し離れたところに飛び降りる


着地してから断末魔が轟く


いまだに視界が歪み白く霞んで見えないが、悶え苦しんでいるのだろう

味わったことのないスリルを体感したような面白さについ笑ってしまう


それに自分はこんな人間だったかと恐怖も持った




「…楽しい夢だな、尊敬しちゃう」



ーーーおかげで、日頃のストレス発散できた




そう楽しさの余韻に浸っていると複数の足音が聞こえて来た




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