figure skating

□ライバルでもあり恋人
2ページ/7ページ


グランプリシリーズが始まった。

僕も彼女も出場が決まった。

「結弦は調子どう?」

香織は電話越しに聞こえる彼の声に耳を澄ませた。

「ん〜いいと思うけど…」

「結弦?」

「…香織が足りない」

小さい声で囁かれた言葉に香織は頬が厚くなるのを感じた。

「カナダで会える…から待ってて?」

「…待てない」

「ふぇ??」

ガチャっとドアが開く音がしたと思ったら、バタバタと足音がしてぎゅっと抱きしめられた。

「ゆ、結弦!?」

「無理言ってこっち来ちゃった」

「来ちゃった…じゃないよ」

真っ赤になった香織に結弦は顔が緩んでしまう。

「だって俺のパワーの源は香織だから」

ぎゅうっと抱きしめる彼の温もりを感じ身を任せる香織。

「…結弦だけじゃないよ?私も結弦が元気の源だよ」

くるっと向きを変えて彼に抱き付く。

「うん…知ってる」

「へへ…」

「一緒にカナダ行こう」

「うん!」

二人は出発までの時間をゆっくりと過ごしたのでした。



カナダ入りした二人はリンクへ向かった。

練習する場所は同じ所にした二人。

準備運動をしてから二人はリンクへ降りた。

「なんか結弦と一緒に滑るのは久しぶりだね〜」

「そうだね〜」

「結弦、久しぶりにあれやろ?」

「あ、いいね」

そう言って二人は加速していく。

「3!」

結弦がそう叫ぶと、二人は真反対の位置でトリプルサルコウを決める。

「2.5!」

香織がそう叫ぶと、二人はダブルアクセルを飛んだ。

「3と3!」

そこは二人ともトリプルトゥーループからのトリプルサルコウ。

「3と2と2!」

トリプルルッツ、ダブルトゥ2回。

「香織、最後に重いだろ!」

「いいじゃーん!」

「じゃあ、最後は好きな奴!!」

そう言ってお互い加速していく。

結弦が飛んだのはクワド。

香織が飛んだのはトリプルアクセル。

「香織!?」

「へへっ…飛べちゃった!」

スーッと真ん中に寄ってきて、結弦は香織の頭をポンポンと叩いた。

「やったな!!!」

「うん!でも、これは本番では飛ばないけどね〜成功率安定してないからダメって言われたから」

くるくるとスピンを始める香織。

「そっか、これからだな」

「うん、でもいつか真央さんみたいに大舞台で飛べるようになりたい」

そう言った彼女の微笑みが結弦にとって明日への力になるのだった。


そして迎えたSP。結果は結弦6位香織は2位だった。

香織は終わった後すぐ結弦に連絡した。

「今どこ!?」

「リンク」

「練習の?すぐ行くから待ってて!!!」

バタバタと会場を後にした香織は結弦がいるリンクへ向かった。


「はぁ…ダメだな…」

結弦はリンクの真ん中に寝転んで天井を見上げた。

「結弦!!!!」

慌てて靴を履いて、リンクへ降りる。

「結弦!」

ぎゅうっと抱き着いた。

「香織」

「いつも通りの演技したらいいんだよ…このシリーズは魔物が住んでいるって言われてるけど、結弦はもっと自由に飛んだらいいんだよ」

「香織…」

「結弦は…世界一のスケーターだけど一人の男の子。まだ、これからじゃない」

「…ふっ…そうだね」

「フリーはただ滑るのを楽しめばいいんだよ?好きだから、最高の演技をファンに見せたいって…んっ!?」

香織の言葉を遮るように、結弦は唇を重ねた。

「ちゅ…ちゅっ」

「んっ…んんっ」

ゆっくりと離れた結弦はいつもの笑顔だった。

「ありがとう香織。大好きだよ」

「結弦…私も大好き!!!」

ぎゅうっと抱き合った二人。

フリーでは結弦も挽回し、2位。

香織はミスはあったものの2位を獲得した。

移動の飛行機の中で二人は偶然隣り合わせで、最初はきゃっきゃしていて周りを和ませていたが、二人の寝顔を見た周りはこっそり写真に収めていたのだった。


コーチ二人は顔を見合わせて思わず笑ってしまった。

「幸せそうに寝ちゃって…」

「そうですね」

「戦士の休息…ですかね?」

「そうですね」


こうして二人の戦いは始まったのであった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ