帝光中学のマネージャー

□分岐ルート6
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着替え終わり、待ち合わせの正門へと向かう。





すると…





正門にもたれかかり本を読んでいる、とても絵になる姿の彼…





赤司君だ。




『せ、征十郎君!お待たせ!』



そう叫ぶと、本から目を離し、こちらを見てニコリと微笑む彼。




ドキッ




あ、赤司君の笑顔って…



ほんと綺麗でかっこいい…





『ごめんねー、待たせちゃって…』



「いや、そんなに待ってないよ?それに、女の子はいろいろと時間がかかるからね。気にしなくて大丈夫だよ」





対応が紳士的だ。




「じゃあ…行こうか?」




そう言って手を差し出す赤司君。




ん?



手?




『え…な、なに…この手…』




キョトンと赤司君を見ると




「え?…下校デートだし、手くらい繋ぐものだろう?」



!?


か、仮にものカップルですよ!?


て、手なんて…




『む、無理だよ…』


「どうして?」




そ、そんなほんとにキョトンとした顔でこちらを見ないでっ



「誰も見てないよ。手くらい…繋いだって誰にも何も言われないさ」



手を引っ込めようとしない赤司君。




こ、これは…観念するべきなの!?




で、でも…




『…わ、わかった。…じゃあ…せめて正門出てからにしよう?』




そうしよう…それならまだ…




「そんな変わらないと思うけど…君がそうしたいなら…」




赤司君は手をようやくひっこめた。



けれど、ホッとしたのもつかの間…





正門を出るとすぐに



「これでいいよね?」




絡められる右手。




っ!?




容赦なく恋人繋ぎ!!



心の準備ができないままっ




『あ、赤司君!?!?』



「呼び方…」



ふ、不満そうな顔してるけどそれどころじゃないからね!?



『せ、征十郎君…』



「こうやって手を繋ぐと…ますます恋人っぽいね」





もう…何言ってもダメだ…




私は諦めて、赤司君と手を繋いで帰ることにした。








「……どこか寄っていきたいね」



赤司君が帰り道、ぽつりとそういった。




『あれ?用事があるんじゃないの?』



「うん…。まぁでも、少しくらいなら大丈夫」



寄り道…かぁ




私は…ゲームセンターとか、服屋さんとか、アクセサリー屋さんとか寄って帰ったりするけど…




赤司君ってゲームセンターってイメージはないし…



服屋さんやアクセサリー屋さんは男の子にとっては面白いところではないだろうし…





私は辺りを見回した。




『あ…あれ…』




公園の近くに、小さなアイス屋さんが来ていた。



移動タイプのお店らしい。いつもはここには無いはずだけど…




『アイス買ってさ、公園のベンチで食べて帰ろうよっ』



すると赤司君は微笑み



「あぁ、そうしよう。…ありがとう」



『っ…行こっか』



私は赤司君の手を引き、アイス屋さんへと向かった。






『いろんな種類のアイスがあるねぇ』




そこに書かれていた看板には



バニラ
ストロベリー
チョコ
抹茶


それから
豆腐…




豆腐!?!?





豆腐アイス!?


なんでこれだけ変わり種!?




『あ、私はストロベリーにしようかな』




赤司君に目をやると…



「俺は…」




と、豆腐アイスをガン見してる!?




赤司君って変わったものが好きなのかな?



「…これに…しようかな」



指差したのは豆腐アイス。




『せ、征十郎君って変わり種アイス好きなの?』




「え?…いや、豆腐が好きなだけだよ。それに…絶対美味しいと思う」



そ、そうかなぁ…


想像できない味だ。




「君はストロベリーでいいのかな?…じゃあ買ってくるよ」



『えっ、あ…お金…』



鞄から財布を出そうと手を突っ込むと…



パシッ



その手は掴まれ




「今日は俺がだすよ。…気にしないで」




赤司君はそう言ってアイスを買いに行った。




いいのかな…



まぁ…赤司君がそう言ってくれるなら…






「はい、お待たせ」




少しすると、アイスを2つ持って赤司君が帰ってきた。




左手には白いアイス、右手にはピンクのアイス。



私は右手のピンクのアイスを受け取る。




『ありがとう』




「じゃあ…こっちのベンチにでも座って…」





公園の中のベンチに座る。





『いただきます』




私はパクリとストロベリーアイスを食べる。



冷たくて、甘酸っぱくて…



『美味しい…』



「ふふ、美味しそうに食べるね」



『だ、だって美味しいし…』



赤司君も一口、白いアイスに口をつけた。





「っ…」




ど、どんな味なんだろう…




「…期待通りだ。すごく美味しいよ」



『えっ、ほんとに!?』



「驚き過ぎじゃないか?…ほら、一口食べてごらん」




私の口元に近付けられた豆腐アイス。




え…これって…



か、間接キス…



「そんな警戒しなくても、ちゃんと美味しいよ?」



そ、そこを警戒してるのではなく…



あぁ、



もう食べちゃえ!




私はパクリと豆腐アイスを食べた。




『…!』




口の中でまろやかに溶ける感覚、ほんのりした甘さ、最後にうっすらと残る豆腐風味…





『お…美味しい…』



「ふふ、よかった」



変わり種もなかなかいけるなぁ…




『あ、よかったら私のストロベリーも食べていいよ!』




私は赤司君の前にアイスを近づける。




あ…



赤司君って…上品な感じだしこんな感じでアイスなんて食べないよね…



どうしよ…引っ込めたほうが…




「いいの?じゃあ、いただくよ」



アイスを持っていた手に、赤司君の手が重なる。



ドキンと心臓が飛び跳ねた。



そして、彼の口元へと近づけられる。



「…ん…」



赤司君は一口、ストロベリーアイスを食べた。



なんて綺麗なんだろう…



魅入ってしまうほど…彼の食べ方は綺麗で…



「…ストロベリーも美味しいね」




『そ、そうでしょー』




ドキドキが止まらない。




手が、顔が…熱い…





「…あ、手にアイスが落ちてきてるよ」



ふと目をやると、確かに溶けてきたアイスが私の手に…




『やばっ…制服が汚れちゃう…』




すると、赤司君は急に手を引き寄せ、自分の口元へと持って行き…



『へ…』





ペロリとアイスのたれている部分を舐めてきた。




『っ…』




思わず手を引っ込めたくなったけど、アイスを持っている手をそうそう素早く引っ込めてしまえば大変なことになる。




『…っちょ…あ、赤司君!!』




「……ん?」





ニコリと笑ってこちらを見る彼。




顔が熱い、手が熱い…



ここから逃げ出したいくらいだ。



『き、急に…なにするの…』




「アイス…制服に落ちたら大変かなって」




『っ、手…は、離してっ』



「どうしたんだい?顔が赤いよ?」




もうっ!
絶対からかってる…



『っ…』


赤司君はふわりと笑い



「ごめんごめん。…これ、使っていいよ」



ポケットからハンカチを取りだした。



『あ…ありがと…』


「君が予想以上の反応をしてくれるから…つい、ね」




や、やっぱからかわれてる!!




アイスを食べ終わると、赤司君は私を家まで送ってくれた。



帰り道では他愛のない話。



特にそのあとはからかわれるようなこともなくて…



「…今日は楽しかった。また明日」




最後に頭を優しく撫でられ


トクンと小さく胸が跳ねた。





なんだろう…この気持ち…




少しずつだけど、赤司君に…気持ち…向いちゃってる?



そんな想いが、心の片隅にできてしまっていた。
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