帝光中学のマネージャー

□分岐ルート6
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翌日。



部活にて




「かなみ!データを取ってきてくれないか?」


『わかったー』



赤司君にそう言われ…あ、征十郎君にそう言われ、私は部室へと向かおうとした。




「ちょっと待つのだよ」



急にガシッと腕をつかまれる。



振り返ると



『緑間君?どうしたの?』



緑間君は恐る恐る


「お前は…いつから赤司に下の名前で呼ばれるようになったのだよ」




あー…気付くのはや…



『んー…なんか…呼ぶことになってさ』



とりあえず…付き合っていることは黙っていたい。

仮の交際だし、一週間で別れちゃうんだから…



「えー、なになに?なんの話っスかー?」



黄瀬君も来ちゃった…



「俺にも教えてよー」



ガッと黄瀬君に肩を組まれ、顔が近付けられる。


『き、黄瀬君顔近いよっ!?』



「えー?照れちゃって可愛いっスねー」



照れてるとかじゃ…




その瞬間



「黄瀬、かなみから離れろ」




黄瀬君の背筋がピンと張るのが感じられた。



「え?え?…あ、はい…」



なにかを感じ取ったのか、私からすぐさま離れる黄瀬君。


そして私は、赤司君に引き寄せられ



「かなみと付き合うことになった。…手を出すことは許さない」




え!?ちょっ



「「「えぇ!?」」」




他のみんなも駆け寄ってきて



「えっかなみちゃんいつのまに赤司君と!?」




さつきちゃんは興奮気味に乗り出してくる。




「えー…かなみちん、付き合っちゃったの〜?」


「まじっスか…」

「んだよ…赤司のどこがいいんだよ…」


「青峰君、仮にも赤司君の前ですよ。…でも…悔しいですね」




み、みんなにバレちゃったよ…



ふと、緑間君を見ると


彼は何も言わなかったが、ジッと赤司君を見てるようだった。



「あぁ…そういうことだから。…こいつに手を出したらただじゃおかないよ?」



赤司君の笑顔は、きっとここにいるみんなを脅すのには絶大な効果を放っただろう。




『あ、赤司君…言わないでって昨日…』



コソッと耳打ちしようとすると



唇に人差し指が当てられ



「しー…。あと、赤司君じゃないだろ?…一週間だけだ。終わればみんなには俺から言うから…それまでは…な?」




はぁ…




仕方ない…



『…わかった』




そう言うと、赤司君は優しい笑顔を向けた。



「ありがとう」



あぁ…


この笑顔…ずるい。




私は不意に顔を背けた。


「……照れてる?」


『て、照れてない!』


「顔真っ赤だよ?」


『あ、暑いだけ!ってかそろそろ離れてよっ』



私は赤司君から離れようとした。


今の格好は、赤司君に引き寄せられ、腰に手を回されなんとも恥ずかしい格好だった…




「あぁ…」



赤司君は笑って私から離れる。



「じゃあ、部活を始めよう」





赤司君は何事もなかったように、部活に戻っていった。








いつも通りの基礎練、ゲーム連、そして最後に自主練。



この自主練は、別にやらなくてもいいのだけど、キセキの世代のみんなはほぼ毎日していた。



けれど、最近、赤司君は時々自主練をしないで帰る時があった。



そして…


「かなみ!」



赤司君に呼ばれて振り向く。



持っていた何本ものボトルをつい落としそうになり…



「…っと」



落ちる前に赤司君が支えてくれた。



『ごめ…』



「…かなみはいつも一気に持ちすぎだよ。…半分持つから貸して?」


『えっ、いいよ。私の仕事だし…』


『君の彼氏なんだから、これくらい手伝わせてくれないか?』




彼氏。



その言葉で、胸が飛び跳ねる。



ただの一週間だけの関係なのに…



『じ、じゃあお願い』



「ん…。あ、そうだ。今日は用事があるから、自主練はパスするよ。…それで、よかったら一緒に帰ってくれないか?」



『赤……せ、征十郎君、最近自主練来ない日あるけど…なんの用事?』


赤司君はふわりと笑い



「別に。大した用事じゃないよ」



彼の笑顔からは、それ以上は教える気はないといった感情が読み取れてしまった。



『そ、そっか…。でも私…まだやることがあるから…』



マネージャーの仕事を放っていくわけには…



「かなみちゃん!いいよ!あとの仕事は私がやっておくから!」



そう言ったのはさつきちゃん。



『え?でも…』

「いいってば〜。付き合いたてなんだし、思う存分イチャイチャしてきて!」


ドンッと背中を押され



『わぁっ…』



赤司君の方へと前のめりになる。




「桃井、ありがとう」


「どういたしまして〜」




結局、私達は一緒に帰ることとなった。




「着替えてくるよ。正門で待ち合わせでいいかな」


『う、うん』




そう言って赤司君は、更衣室へと向かっていった。





私も用意して帰ろう。



みんなの自主練、付き合ってあげられないのはちょっと心残りだけど…




「おい」



ふと声をかけられ、振り向くと



『緑間君?どうしたの?』



緑間君が、複雑そうな顔をして私を見つめた。



『え、え?』


「…赤司と…本当に付き合っているのか?」



ドキッ


やばい


『ほ、ほんとだよ?』



声が裏返ってしまった!



「……お前は…知っているのか?」



『…え?な、なにを?』




「………いや……いい」



緑間君は少し言いかけたが、直ぐに目線を逸らしてそう言った。




「…引き止めて悪かったのだよ。お疲れ」



『お、お疲れー』



私は小走りに女子更衣室へと向かった。




やばい…バレるかと…思った。




なんで私がこんな嘘…つかないといけないんだろう…


ハァ



一週間の辛抱。



でも…先が思いやられるよ…
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