帝光中学のマネージャー

□分岐ルート6
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「次で降りるよ」




なんて長い電車だったんだろう。




私はコクコクと首を縦に振る。



こんなずっと、赤司君に密着されて頭がおかしくなりそうだ…





ウィーン




電車の扉が開く。




『へ…』



私は後ろへ傾く。




まさか…


開く方こっち!?




ヤバい…


転ぶ…





私は目を瞑った。



「…っと」




すかさず腕が引かれ、赤司君の胸へと引き寄せられる。




「危ないよ?」



赤司君に抱き締められる形になり、咄嗟に飛び跳ねるように離れる。



『ご、ごめんごめんごめん!さ、いこ!』



私はすぐに水族館の方へと向かった。


ダメだ…


ドキドキがまだ収まってない…



赤司君をまともに見れない…





「今日の服…可愛いね」



『へ…』



先々と歩く私は突然の言葉に足を止める。



「すごく俺の好みだ。…狙ってたのかな?」


ま、またそういうことをー…


でも…悪い気はしない。
前々から必死に選んだコーディネートだ。
褒められることは嬉しい。


『ありがとう。…あ、赤司君もかっこいいよ!』



赤司君の制服姿や練習着姿は見てきていても、私服を見たことがなかった。


白いシャツにカーキのズボン。


すごくシンプルなはずなのに、赤司君がとてもかっこよく見える。

これが元がいいということか…


「そう?…ありがとう」


ふわりと笑顔を見せる赤司君。


その笑顔はまるで王子様のようにキラキラしていて…
こんな人と今デートしてるのか…って少し緊張が増してしまった。




『え、えっと…水族館っていくらだっけ??』



どうにか話題を逸らそうと、私は財布を取り出す。




「あぁ…水族館のチケット貰ってるから。お金はいらないよ?」



『あ、そっか…。そうだよね』




カァっと赤くなって財布をしまう。



「…まぁ…タダで水族館に行けるんだから僕にお礼したいというなら…」



赤司君が急に近くなり、私の頬に触れた。



「今日一日…俺の恋人になってよ」





なんだ恋人になるくらい




恋人



恋人!?!?!?




『えっ!?こ、恋人って…あの恋人?!?』



「他にどの恋人があるのか分からないけど」



困ったように笑う赤司君。




い、いやいやいやいや!
おかしいでしょ!?


「もちろん、手を繋いだりして水族館を回るだけでいいよ?君の合意なしに手を出したりはしない」




何涼しそうな顔で変なこと言ってるの!?


赤司君って…



変人なの!?



『む、無理!いくらお礼といっても…す、好きでもない人同士が恋人とか装えないし…そうする意味も分からない!ふ、普通に水族館まわろうよ…』





私も赤司君も…

別にお互いのことを好きなわけじゃないのに…


これってただのからかい…



赤司君を見ると、少し悲しそうに笑って




「好きでもない人同士…か。…そうだね、さすがに無理なお願いだったかな。悪い、忘れてくれ」



そう言って赤司君はポンっと頭を撫で


「今日は普通に楽しもう。せっかくの君とのデートだ」




ニコリと笑い、水族館の方へと歩いて行った。




私は困惑しながらも、赤司君のあとをついて行った。





やっぱり、ただのからかいだったの?



赤司君ってほんと読めない…



こんなんじゃ、1日のデートで赤司君を理解することなんてできないのでは…



「どうした?…行かないのか?」




『あ、ごめん』




私は小走りで彼を追いかけた。
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