短編―あんスタ

□月永レオ
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ふっと…
柔らかな風が髪を靡(なび)かせて

『ふふっ、ほら月永、早く!』
「お待ちください、お嬢様!」

もっと…
こちらへと手招きするように
おれを急かす


『月永が遅いのよっ!
早くしないと消えてしまうわ!』
「また、インスピレーションが〜
なんて言うんですか?」
『ええ!思いついたらすぐに書く!
素晴らしい物を取りこぼさない様にね!』
「……はぁ…」


名家の一人娘として育った結羅
おれはそんな結羅に仕える騎士の1人
たかが騎士1人のおれ。
なのに、何故か彼女はおれを贔屓するかの
ような素振りを見せる


例えば……



―『ねぇ、散歩に行ってくるわ』
― 「結羅お嬢様、でしたら
メイドか仕える者を―」
―『もちろん付けるわ
という訳で、月永を呼んできて!』




なんて日常茶飯事


―『ねえ見て!お父様のご友人が
私に沢山の菓子をくれたの!』
― 「それはそれは……
お嬢様が喜んでいただけて何よりです」
―『でも量が多いわ……
ねぇ、月永を呼んできて!
月永と二人で食べるわっ!』



なんてこともあった
決して許されることは無いと知っても
心に募ってく。名家のお嬢様と
それに仕える騎士の1人。

こんな身分なんて、無ければいいのに
皆、平等ならいいのに
そんなこと数え切れないほど考えてきた
こんなに、沢山の騎士がいるこの屋敷で
おれだけこんなに呼んでくれる
こんなに頼ってくれる。

貴女(結羅)への忠誠の器から

『ほらほら!見て月永!
インスピレーションが浮かぶわよ』

嗚呼……

「…そうですね」

零れていく
この、【愛しい】という気持ちが
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