誠凛高校

□ダメ…ですか?
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放課後は部活優先させてもらってるんで、部活がオフの日は放課後の図書当番だ。
下校時間が近くなり、残っていた一人の貸し出し手続きが終わり、俺は戸締まりを始めた。
はぁ〜 しかしよく降るな〜
30分前から降りだした雨はやむ気配はなかった。
梅雨だから天気も不安定なのは仕方ないけど。
その時、図書室のドアが開いた。
あの〜 俺もそろそろ帰りたいんですけど…
雨のせいもあり、やや気落ちしながらカウンターに向かう。
「お〜居た居た」
俺の姿を見つけるなり聞こえてきた声は、聞き覚えがあった。
同じバスケ部の木吉先輩だ。
「あれ?どうしたんですか?」
俺は木吉先輩に駆け寄った。
「あ〜 部室で2号と遊んでてな。いざ帰ろうとしたらこの雨だ。傘持って来てなくてな、どうしたもんかと思っていたら、今日は降旗が図書当番だったのを思い出して、来てみたんだ」
あれ?木吉先輩ってそんなに図書室来ないのに、何で今日が俺の当番って知ってるんだ?
「雨宿りですか?」
「あー違う違う。だってもう下校時間だろ」
「ですね」
「じゃ帰ろうぜ」
「え?」
「降旗傘持ってるだろ。途中まで入れてくれよ」
「えー!」
俺と木吉先輩が一緒に!
「ダメか?」
「あっいや、そうじゃなくて…」
「ならいいんだな」
「は…はい」
うわ なんか釣られて返事しちゃったけど、どうしよう。
木吉先輩と二人で帰るのなんて初めてで緊張する。
だって俺は木吉先輩を……
「もう帰れるのか?」
「あっ えっと…戸締まりをして、カウンターを片付けたら」
「そっか。なら降旗はカウンターを片付けろよ。戸締まりは俺がしとくからさ」
「でも…」
「カウンターのこと俺は分からんし、手分けしてやった方が早いぞ」
「そうですね。ではお願いしてもいいですか?」
「おう、任せろ」
俺は片付けをしながら木吉先輩を目で追っていた。
頼んでおいて失礼なんだけど、やり忘れがないか気になる。
それともうひとつは……木吉先輩と二人きりというこの状況は今の俺にとっては……
俺なら踏み台を使わないと届かない窓も、木吉先輩はひょいっと手を伸ばして閉めた。
20センチの身長差って大きいな。
「ここもよし。ここもよし」
木吉先輩は一ヶ所ずつ指差し確認をしていた。
「よし、全部出来たぞ。そっちはどうだ?」
「はい、終わりました。ありがとうございます。じゃ俺鍵を職員室に持って行きます」
「なら下駄箱で待ってるぞ」
「はい」
電気を消し、鍵を閉めて、職員室に向かった。
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