火神と木吉

□付き合ってくれ
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「俺、火神が好きになっちまった」
木吉が言ったこの一言が日向の思考回路を完全に停止させた。

話しは30分前までさかのぼる。
部活が終わり着替えをしている日向に木吉が言った。
「日向、ちょっと相談したいことがあるんだが」
「断る!」
あまりにもキッパリと言われ、木吉は一瞬返す言葉を失う。
「なぁ〜頼むよ。こんなこと相談出来るの日向だけなんだ」
いつになく真剣な木吉に日向は追い討ちをかける。
「だから断ってんだよ!」
そう、日向は心の底から嫌な予感がしていた。
「そっか〜ならしかたないか。相談に乗ってくれたらこれお礼に渡そうと思ったのにな〜」
木吉は日向に戦国武将のフィギュアを見せた。
「それは!!」
日向の目付きが変わった。
「それどうしたんだよ!!」
「昨日ゲーセンで取った」
「ゲーセンって駅前のか!!」
「そうだよ」
「マジかよ!!てか幾ら使った!!」
「あ〜500円くらいかな」
「500円!!」
日向の声が大きくなる。
まぁ無理もない。日向はこれを取るために二日前に3000円使ったのに取れなかったのだ。
それをあっさりと500円で取った男が目の前に居る。
「そうすると誰に相談しよーかな」
木吉はクルッと日向にせを向けた。
「ちょ ちょっと待て!!そんなに困ってるなら相談に乗ってやらなくもない」
「えっと…どっち?」
「だーかーらー相談に乗ってやるって言ってんだよ!!」
「そっかー 助かるよ」
途端に木吉が笑顔になる。
日向は木吉に向かって手を伸ばした。
「ん?」
「それくれるんだろ」
「おーそうだった。忘れてたよ」
「忘れんなよ!!そこが一番大事だろーが!!」
木吉から受け取ったフィギュアを日向はニタッと微笑みながら鞄にしまった。

このあと引き受けたことを心底後悔するとも知らずに。
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