誠凛高校

□今は自分の出来る事を
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先輩の額にはまだ絆創膏が貼ってあった。
これは先日の霧崎戦でのラフプレーによるものだった。
制服に隠れて見えないが、腕や脚にも多くの痣が残っているはずだ。
俺はそんな先輩を見ているだけで何も出来なかった。
勿論試合に出て先輩の代わりが出来るはずがない。
ならせめて手当てくらいは、と思ったがそれも出来なかった。
そんな自分が許せなかった。だから次の試合までには何とかしてテーピングは出来るようになりたいと思い調べてたのだが、まさかの本人登場にはビックリした。
「先輩…怪我大丈夫ですか?」
「あーこれか?問題ない」
先輩が何時ものようにニコッと笑った。
「ありがとな心配してくれて」
「いえ、俺は先輩に何もしてあげられなかったんで」
「そんなことないぞ。ベンチからの応援に毎回助けられてる」
「え?でも俺は…」
「試合に出てプレイするだけが勝利じゃないぞ。さっきのだってみんなの為に調べてたんだろ」
「…はい」
確かにそうだが、俺は…木吉先輩の為に…
「それにリコが言ってたぞ、降旗が備品の管理をしてくれて助かるって」
「俺にはそれぐらいしか出来ませんから」
「何言ってるんだ、大切なことだ。俺たちが安心してプレイ出来るのはそういった小さな事をしっかりとやってくれてるからなんだぞ」
木吉先輩が俺の頭をクシャクシャと撫でた。
そしてそんな木吉先輩の言葉がスゴく嬉しいかった。
「降旗だけじゃない、河原も福田も確実に上達している」
「そうですかね?」
「ああ、早く降旗と一緒にコートに立ちたいよ」
「…木吉先輩…」
「これからも頑張ろうな」
「はい!」
俺はまだまだコートに立てそうもない。
けどみんなが居るから頑張れる。
だから今は自分の出来る事を精一杯やるしかないんだ。



【終】
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