カナタの想いは何処へ行く

□第1夜*Returned Home
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「兄さん?何で奏の顔覚えてないの?」




リナリーの黒い笑みが司令室の中を支配する。俺すっかり忘れられてたんだな…




奏は遠い目になっている。




「だって〜。奏ちゃん5年もいなかったんだもん」




そう。俺は12歳で教団を出て放浪の旅をしていた。そういえば5年前、俺と仲の良かったリナリーは涙まで流してくれたっけ。




この5年間、教団には連絡もせず他のエクソシストにも逢わなかった…正に音信普通って奴?




リナリーは怒るかと思っていたが大丈夫、なのか?




「……そうよね。5年間も連絡1つくれないで…奏のバカ!心配したじゃない!!」




リナリーが俺に抱きついて、5年前と同じ涙を流す。でも今日の涙は寂しさではなく安堵の涙なのだろうな。




「ごめんリナリー」




そして有難う、俺の帰りを待っていてくれて。そんな感謝の気持ちを籠めて彼女の額に軽くキスをする。




「か、奏ったら!私は嬉しいけど仮にも女の子なのにこんなことしちゃって…」




「いいんだよ俺のリナリーだから」




「あぁぁ〜奏ちゃんが僕のリナリーをぉぉぉー…」




俺はそっと囁いて、お姫様の機嫌も直ったようだ。コムイの五月蝿い嘆きも聞こえる気がしなくはないがな。




さぁ、今日から久しぶりの生活が始まる。









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