溺愛

□愛し方
1ページ/1ページ




陽「直樹」




ある日の午後。


寝てるふりして『彼女』を見守っていた。


『彼女』は友達と楽しく会話をしている。


時計の針は17時を差していた。


が、外はまだ陽は落ちていなくて明るかった。


他の奴らはもうとっくに帰っていたため、教室に居るのは俺と『彼女』とその友達だけだった。


しばらく経つと、『彼女』の友達の一人が「バイトの時間だ」と言って帰っていった。


それに続くように周りの友達も帰っていく。


俺と『彼女』の家の方向の奴らはあまりいない。


そのため、『彼女』は俺と一緒に帰る。


それが、いつもの日課だった。






そして毎回のごとく、『彼女』に声をかけられ起こされた。







「...帰るのか?」





俺がそう聞くと「帰る」といつもは言うはずなのに、今日は違った。








陽「帰る前に、一つ聞きたいことがあるんだけど....」


「うん」


陽「巳風くんの事」








巳風.....?



あぁ。こないだ俺が殺した奴――愁か。




あの日、学校は報道沙汰になった。



遺体は当然、誰にも見つかるはずもなく行方不明として報道で流れた。



遺体は今頃、灰になって消えているだろう。




報道よりも先に騒ぎ出したのは、クラスの連中だ。




愁は意外と女子から人気があったらしく、好きだった女子は泣き喚いていた。




俺としては、どうでもよかった。



『彼女』にしか興味がない。



周りがどうなろうと、知らない。



だから、騒ぐ奴らと一定の距離を保っていた。






「愁が何?」



陽「あの日、巳風くんと一緒に帰ったよね?」


「あぁ、帰ったけど?
そのまま俺の家に遊びにも来たね。それがどうしたの」


陽「巳風くん、その後ちゃんと家に帰ったかどうか知ってる?」


「.....陽香は、愁のこと気になんの?」


陽「気になるっていうか、心配してるだけ。ほら、美穂が巳風くんのこと好きだった――」


「俺、そういうの興味ないんだよね。陽香もわかってるだろ、長年の付き合いなんだから。
俺は、周りとか興味ないって」


陽「それは、そうだけど...。直樹、巳風くんと――」


「...しつこいな。巳風巳風って煩い。君の口からその名前、聞きたくない。次、その名前口にしたら知らないから」



陽「あ、直樹待って...」






『彼女』の言葉を最後まで聞かずにカバンを持って、教室を出た。



俺のいる前で他の野郎の名前出すとか、死にたいのかな『彼女』は。


それが望みなら、喜んで殺してあげたいけど面白くない。


野郎の理由で殺すなんて、もったいない。



殺すなら『彼女』の頭の中を俺でいっぱいにしてから殺したい。


殺したら、綺麗に残さず食べてあげないとなあ。


血の一滴も残さないように食べてあげる。


『彼女』はどんな味がするのかな。


早く、食べたい。









愛してる、って簡単に口では言える。


けど、行動だとそこらの猿はセックスで終わらすだろう。


けど、俺はそんな猿たちとは違う。


愛してるからこそ、この手で息の根を止めてあげるんだ。


他の誰にも、渡さないために。




これが、俺なりの「愛し方」。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ