溺愛

□好きだよ
1ページ/2ページ






幼馴染の『彼女』――陽香。




『彼女』は夏なのに肌が白く、制服のシャツから出る細い腕は、肌の白さを一際目立たせた。



綺麗すぎて見とれてしまい、『彼女』には無断だけど、写真を数枚撮った。




綺麗だな、ほんと。







(また待ち受け画増えた..)







画像を見て思わず頬が緩む。








愁「直樹ーなに画面見てニヤケてんだよー!」







がばっと効果音がつきそうなくらい、勢いよくコイツは抱きついてきた。







「ニヤけてねーって」







電源を落としてポケットの中にしまいながら答えた。







「つーか離れろって」








あいにく俺は男に抱きつかれてドキっとするような奴じゃない。


一部の女子はそれを見てきゃーっと叫ぶ奴もいるらしいけど。


抱きつかれるなら『彼女』だけがいい。








愁「ほんとかー?彼女でも出来たんか?」


「いねーよ、んな奴」


愁「いたら飯おごれよ!」


「はいはい」








やっとのことで開放してもらえた。


ふと顔を上げると『彼女』がこちらを見ていた。


『彼女』は慌てて視線を外した。






もしかして今の会話聞いてたのか?


それで気になってこっち見てたとか?







(....可愛いなあ..)







また俺は頬を緩ませる。










愁「あー。今さ、陽香ちゃんこっちみてたよな?」







愁は俺の隣の席に座って小声で話した。








「...しらねぇな」






つうかお前みたいな奴が『彼女』の名前を気安く呼ぶな。







愁「俺、あの子好きだわー」








――プチン






俺の頭の中で何かが切れた音がした。








コイツ、『彼女』のこと好きって言った?


俺の『彼女』に。


そんなの俺が許さない。


ああ....かわいそうに。


こんな汚らわしい奴に好かれてるなんて。


『彼女』が哀れだ。


コイツの汚い目で『彼女』を見られていたら『彼女』は汚れてしまう。


一刻も早いうちに排除しないと、な。








「なぁ」


愁「んー?」


「今日の放課後空いてるか?」


愁「おお、空いてるぜ!」


「良かった。ちょうど俺の親が海外に出張でいないんだ。
遊びにでも来いよ」


愁「まじかよ!じゃあお邪魔させてもらうわ!」






馬鹿なコイツはまんまと俺の誘いに引っかかった。


今日がコイツの命日になるというのに。



早くこの邪魔者を消したい、その気持ちで俺の心はいっぱいだった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ