汐の本棚

□てがみ
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 にいさん、元気にしてますか。ロンドンはいいところでした。にいさんも連れていけば良かった。

僕は、あなたにあいたくてたまらない。
もうすぐそちらに帰ります。多分、三月二十日につくと思いますよ。

義秀より


 なんという、恥ずかしい内容を混ぜてるんだ。
藍沢燈也は手元にある短い手紙を読み終え、困ったように笑った。
顎を撫で、弟の義秀からの手紙をもう一度眺める。
「二十日って、今日じゃないか」
あいつ、返事が出来ないように、わざわざ手紙で出したな。
燈也は義秀の悪戯な笑みを思いながら、小さく息を吐いた。
燈也は窓を開けて、陽射しを部屋に受け入れた。そっと風が頬を撫でる。
いい天気だ。
燈也は晴天に目を細め、流れる雲に見とれた。

 玄関から小さくチャイムが聞こえた。
来たか。
燈也は微笑し、玄関に向かった。
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