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□あつみな
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楽屋で私は一人隅の椅子に座って静かに目を瞑っていた。

他のメンバーは談笑したりゲームをしたりわいわいやっている。

うるさいなぁ。

最近仕事続きで流石に疲労が溜まっていた私はいつもはなんとも思わない喧騒が不快に感じイヤホンをつけて遮断した。

シャッフルで流れてくる曲は緩いテンポで次第に睡魔が襲ってきた。

うとうとしかけたとき、何かが私の膝に乗っかけてきた。

なんだと思って目を開けるとそこにはニコニコした敦子がいた。

機嫌が良さそうだ。

「どしたー?」

欠伸をしながら問いかける。

「なんでもないー」

用があったわけではないらしい。

そっかと私はまた目を閉じようとした。

「たかみな」

用はないんやろ。

疲れてるから寝かせてくれ。

「キスして」

その一言で私の眠気は一気に吹き飛んだ。

「あ、敦子」

「なに?」

「いきなり何を言ってるの」

「え、キスしてっていったんだけど」

敦子は訳がわからないと言ったふうに小首をかしげた。

その仕草が妙に色っぽくドキッとしたのはここだけの話。

「ここがどこだかわかってる?楽屋よ?楽屋」

「当たり前じゃん。ねー、キスしてよー」

慌てて敦子の口を塞ぐ。

「なんで嫌なのー。いつもしてることじゃん」

「だ、だって楽屋やん」

ちら、と後ろのメンバーに目をやる。

みんながいるところでキスなんて恥ずかしくてたまったものではない。

まずこの体勢(私の上に敦子が馬乗りになってる)が恥ずかしい。

「別にいいじゃんー」

「恥ずかしいってば」

手をブンブンと振る。

「…しかたないな。」

わかってくれたみたいでよかった。

しかし安心したのははやかった。

敦子の顔が急接近して私の唇を奪った。

「あっ…」

みるみるうちに顔が赤くなった。

「本当はたかみなからしてほしかったけど」

唇をはなした敦子はすこし拗ねたように呟いた。

「あれ、たかみな?」

敦子が私の顔を覗きこんできた。

「顔、真っ赤だよ?」

うるさい。

それは自分が一番わかってる。

後ろを見る。

気づかれてはいないようだ。

「もう、素直じゃないんだから」

あー、恥ずかしい。

「こういうのもいいね」

敦子がポツリと言った。

「え?」

「人が沢山いるところでするの」

「よくないわ!」

「ご、ごめん」

「あ…」

恥ずかしさのあまり語気を強めていってしまった。

「…」
敦子はうつむいてしまった。

あちゃー、やっちゃったよ。

目を見て謝ろうと敦子の顔を見る。

ん?

気のせいかな。

俯く敦子の顔はほんのり紅く染まっている。

…敦子も恥ずかしかったのね。

なんだか急に敦子が愛おしく思えた。

まぁ、いつも愛おしいけどね。

恥ずかしいのにキスしたなんて。

可愛い。

「敦子。」

まだ俯いている敦子に優しく声をかける。

「なに」

上目遣いでこちらをみてきた。

やめてくれ。

敦子の上目遣いに私はとても弱い。

敦子はいつもこういう絶妙なタイミングで上目遣いをしかけてくる。

思わず目をそらした。

「たかみな。嫌だった?」

不安そうに私を見つめながら言う。

「そんなことないよ」

恥ずかしいけどね。

「よかった」

それを聞いて安心したのかさっきのスマイルが帰ってきた。

ほんのり赤くそまる頬。

上目遣いで笑顔。

「…」

「たかみな?」

だめだ。

今日の私はなんかおかしいみたいだ。

私は何も言わず敦子を抱き寄せた。

「た、たかみな」

そしてそのまま敦子の唇に吸い付いた。

「んっ…」

唇をこじ開け口内を舌で掻き回す。

「あ…」

やばいやばい。

顔を真っ赤にして声を押し殺している敦子に私はなんかのスイッチが入りそうになった。

いけない。

まだこのあとに仕事は残っている。

残ってる理性を必死にかき集めなんとか敦子の唇から離れることに成功した。

「はぁ…」

息を荒くする敦子に私は耳元に一言囁いた。

「続きはあとでね」

カァーッさらに顔を赤くした敦子は私を軽く叩いて馬鹿。と小さくつぶやいた。

さっきまであんな恥ずかしいゆーてたのになにをやっているんだ、私。

やっぱり疲れてるからおかしくなっちゃったみたいだ。

いや、あんな表情(かお)する敦子がいけないんだ。


と、頭の中で考えているとスタッフがまもなくですと伝えに来た。

さて、もうひと踏ん張りしますか。

膝から既に降りている敦子とアイコンタクトをしてスタジオへ向かった。

心の中でよっしゃと気合いをいれながら。




続く(?)

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