ぬらりひょんの孫夢小説 弐

□番外編第二弾
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(鯉伴side)




俺の名前は奴良鯉伴。




まあ奴良組総大将であるぬらりひょんを親父に持つ半妖だ。




この妖怪任侠奴良組の次期二代目と呼ばれている。




奴良組のことはだいたいわかっているつもりだ。




が、わからないことが一つだけある。




現在進行形で。




「・・・・・・親父、毎年毎年このバカ騒ぎは何なんだ」




「誕生祭じゃ」




そう、この誕生祭と呼ばれるバカ騒ぎ・・・もとい宴会が俺のわからないことだ。




小さい頃は何気なく、ただのいつもの宴会だろうと思っていた。




けれど、成長するにつれて少しずつ違うモノだと気づいた。




幹部連中なんかが一番わかりやすいだろう。




雪女はどこか遠くを見つめては、ため息をつくし。




カラスはおいおい泣いている。




牛鬼は目に見えて、というわけでもないが・・・どこか悲しそうだ。




そして一番変なのは・・・・・・親父だ。




毎年毎年この日だけは馬鹿みたいに笑う。




いやいつもバカみたいに笑うけど。




そういえば、お袋も本当に楽しそうに笑っていた。




そんな両親を見るたびに俺は疑問に思う。




誕生祭だとみんな言うが、いったい誰の誕生祭なのだろうか。




親父?お袋?




俺じゃないし・・・。




幹部の誰かとか?




でもきっとどれも違うと、俺の直感が言っていた。




そしていつの年か、俺は聞いたのだ。




「これって誰の誕生祭なんだ?」




その瞬間馬鹿うるさかった奴らが、ピタリと止まった。




それはもう文字通りに。




お袋と親父も驚きに目を大きくさせていた。




え、なんだよ。




もしかして聞いてはいけないことだったろうかと、珍しく俺は焦り始めた。




「え、えーっと・・・」




「・・・鯉伴には言ったことあるはずだがのぅ?」




いや知らないんだけど。




「妖様、それは鯉伴がまだ赤子の時のことです。覚えているわけないでしょう?」




赤ん坊の時って・・・・・・いくらなんでもわかるか!




「ん?おお、そうか。じゃ、今教えとくか」




相変わらずの親父の適当精神に俺は少し遠い目をした。




「で、誰の誕生日なんだ?」




「桜生のじゃ」




「・・・・・・桜生?」




その名前に俺はいまいちピンとこなかった。




おそらく聞いたことはあるだろうが、思い出せない。




そこでお袋からの助け舟。




「私の弟のことですよ。鯉伴にとっては叔父さんかしら」




そうだ、確かお袋には弟がいてそいつの名前が桜生だった。




「桜生に叔父さん、なんて似合わんのぅ」




「ふふっ、確かにそうですね」




「なぁ確かその叔父さんって―――」




「―――死んだわよぉ」




冷たくも儚げな声、雪女だ。




「雪女・・・」




「こ、これ雪女!」




カラスが失言だというばかりに雪女に詰め寄る。




「何よぉ。本当のことじゃない。あの子はねぇ、私たちを置いて死んじゃったのよ」




今にも泣き出しそうに吐き出す雪女。




強気な彼女をここまで弱らせるなんて、どんなやつなんだ?




「・・・雪女」




「なによ」




「その桜生ってどんなやつだったんだ?」




「・・・そうねぇ、将来有望株だったわ」




・・・・・・は?




「確かにのぅ、顔もなかなか整っておったし。ワシらに対しては口が悪かったが」




と、親父。




「あら、女に対してはそりゃあもうタラシよあの子」




なんだ?女タラシだったのか?




「ちょっと、桜生をそんな女タラシみたいに言わないでください!そ、そりゃあ甘いセリフを言ったりしてこちらの反応を伺ったりしますけど・・・」




お袋が必死に弁明を行うが、全く意味ないぞ。




「「それがタラシじゃ/よ」」




雪女と親父が口を揃えていう。




「つまり、男には口が悪くって女にはタラシな人だったってことか?」




「それは桜生の一面性じゃ。あとはガキのくせに妙に大人っぽいところとか。一人で何でも悩んでしまうところとか」




桜生のことを思い出しているのか、悲しそうに眉を下げた親父。




「齢十二で死んじまった。ワシを庇ってな。鯉伴にも会わせてみたかったわい」




死んでもなお、誕生を祝う。




それにはどんな意味があるのか、俺にはわからない。




けれど、こんなバカ騒ぎをする日が年に一度くらいはあってもいいかもしれない。




いや、年中バカ騒ぎしてるだろと言われたらそれまでなんだが。

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