ぬらりひょんの孫夢小説 弐

□番外編第一弾
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それは珱姫とぬらりひょんの祝言が終わった数日後の話。




新婚よろしく乳繰り合っている二人。




今日もラブラブで縁側にいた。




ぬらりひょんは珱姫の膝に頭を横にしていて・・・所謂膝枕状態だ。




こんな場面どこかのシスコンな弟が見たら発狂するか、ぬらりひょんを蹴り飛ばして罵声を飛ばしていただろう事が容易に想像できる。




まぁ・・・・・・そんなシスコンな弟も、もうこの世には存在しないが。




奴良組本家の庭で満開に咲いている桜を眺めながら二人はほのぼのとしていた。




「珱姫、ワシはお主と夫婦になれて心の底から幸せじゃ」




祝言の時から何度聞いただろうかこの言葉。




それでもぬらりひょんにとっては、珱姫と夫婦になれて嬉しいしまだまだ言い足りないのだ。




珱姫にとってもぬらりひょんのこの言葉は何度言われようと顔が赤くなるほどに恥ずかしく同時に嬉しいものだ。




「私もです妖様。・・・・・・、」




少し照れたように応えた珱姫だが、その後の顔はどこか暗く沈んでいた。




しかしぬらりひょんにはその表情の意味がわかっていた。




「・・・まだ、桜生のこと辛ェか?」




「・・・・・・はい」




「そうか」




かくいうこの質問をしたぬらりひょんも未だに桜生のことを思うたびに胸が軋むように痛む。




「・・・どうすれば桜生のことを忘れられるでしょうか」




珱姫は今にも泣き出しそうな顔で声を震わした。




否、実際にもう泣いている。




膝枕されているぬらりひょんの頬に温かい雫が垂れて伝ってくる。




珱姫はそれに気づき、涙を拭おうと袖で目をこすろうとする。




しかし、ぬらりひょんは珱姫の腕を掴みそれを止めた。




「あ、やかしさま?」




「・・・・・・忘れる必要はねェよ」




「え・・・」




ぬらりひょんは体を起こし、珱姫を優しくそれでいて力強く抱きしめた。




「大切な弟じゃろう?むしろ忘れてはいかん。ワシも一生忘れねェ。人ってのは死んでも残されたやつが覚えてれば生き続けるのじゃろう?」




ぬらりひょんに抱きしめられ拭うことのできない涙を流し続ける珱姫。




「・・・私っ、約束、したんですっ」




それはぬらりひょんに会う前の出来事。




「桜生の・・・八歳の誕生日のこと、ですっ」




嗚咽が混じりながらも懸命に話そうとする珱姫にぬらりひょんは静かに耳を傾けた。




「・・・あの子は、私の能力のせいで誰にも誕生日を祝われなくなりました。私だけしか祝ってあげられなくて・・・っ。その時、あの子は・・・桜生は言ったんです。楽しそうで嬉しそうで・・・でも瞳をとても悲しそうに揺らしながら・・・、『ずっと俺の誕生日祝ってよ』って・・・っ」




確かあの時は、珱姫をことを絶対に嫁に出さないとかなり真剣な目で言った桜生。




珱姫は姉思いの弟に嬉しくなると同時に、外に出られないのだから恋もできやしないと思っていた。




けれど桜生は約束をしてくれた自分を必ず自由にさせてみせると。




当主になってまた外へ出ようと。




だから珱姫も誓ったのだ。




自分なんかのためにこんなに頑張ってくれている桜生のために、毎年彼の誕生日を祝おうと。




そして祝うたびに思い出すのだ。




この日のことを。




「・・・なのにっ、祝う相手がいなかったら・・・っ、どうすれば、いいんですか!」




「そうじゃのう・・・じゃ、毎年桜生の誕生日には宴会をしよう」




ぬらりひょんは珱姫の体を離し、珱姫としっかり目を合わせてそういった。




「宴会・・・ですか」




「そうじゃ!桜生がいなくなっても、その日が桜生の誕生日なことには変わりない。ワシら奴良組総出で宴会じゃ!これほど騒がしい誕生日祝いはないぞ」




奴良組は本家だけでもかなりの妖怪が住んでいる。




総出といえば他の奴良組の派閥の組も呼ぶつもりだろう。




もしそうなら約一万もの妖怪で桜生の誕生を祝うのだろうか。




それはきっと今までのどの誕生日よりも騒がしく楽しい日になる。




「それにお主は笑っていたほうが桜生は喜ぶ。姉貴贔屓だからのぅ。じゃったらその日はずっと笑って桜生を祝おう。天国に届くぐらいの騒がしさでの」




ニヤリと笑ったぬらりひょんはその日を想像しているのかとても楽しそうだ。




「はい!・・・毎年・・・毎年必ず祝いましょう?私たちの大切な弟を」




「ああ。ずっと・・・な」




人間の寿命は妖怪の何倍も短い。




この美しい姫、珱姫もどんなに不思議な力を持とうとそこは変わらないだろう。




数十年で死んでしまうのだ。




けれど、例え珱姫が死んでしまった後でも祝い続けよう。




そして毎年バカ騒ぎをするのだ。

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