ぬらりひょんの孫夢小説
□第七に
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姉上が父上の命令通り、今日も治癒の力を使う。
あれにはちゃんと疲労もついてくる。
日々あの力を酷使している姉上は、きっとかなり疲れていることだろう。
何もできない自分を責めながら、今日も若様としての務めを守る。
自室で、勉強。
それも立派な当主になるため。
いや、別に当主になりたいわけではない。
けど、あのくそ親父から当主の座を奪い取れれば姉上は自由だ。
姉上の自由のために、俺は筆を走らせ勉学へと勤しむ。
「若様、失礼します」
筆が紙を走る音しか聞こえない部屋の中で、俺の名を呼ぶ声が聞こえた。
声の後に、なにやら知らない男が部屋に入ってきた。
・・・あ、知らなくもないな。
この人どっかで見たことあるわ。
どこでかは知らないけど。
「どちらさまでしょうか?」
「私は本日付でこの家により雇われました。陰陽師の花開院是光と申します」
へー。陰陽師。
ふーん………………花開院んん!!?
って、アレだよな?原作でも結構重要な…。
あ、そういえば姉上の肝を狙う妖怪とかがいるから雇ってたっけ。
わー、すっかり原作忘れてたわ。
そっかそっか、あのクソ親父ついに陰陽師を雇ったか。
まあ姉上が傷つくのは俺も嫌だし、陰陽師を雇うこと自体は否定はしない。
ただ、言ってくれてもよかったじゃないか!
親父の言うことだから普通にスルーして聞き逃してたかもだけど!
「そうですか。花開院殿、私は桜生と申します。どうか貴方の陰陽術で姉上である珱姫を守ってください。よろしくお願いいたします」
これから大好きで大切な姉上を守ってくれる人だ。
花開院なら問題はない。
俺は丁寧に頭を下げた。
「わ、若様!?どうか頭を上げてくだされっ」
「何故です。我が姉を守ってくださる方に礼を欠けと申しますのか」
「いえ!もう十分ですから!」
ふむふむ。なかなか謙虚な人だ。
原作で読んで知ってたけどさ。
「……若様のお噂はかねがね聞いております」
花開院は突然静かに語りだした。
ていうか…噂?って何だよ。
「若様は、その年で次期当主としての才がおありだとか…」
「・・・・・・才?」
なんだそれ。
聞いたことないんだけど。
むしろそんなのないんだけど。
「はい。大人顔負けの頭脳やふるまい、礼を欠かぬその姿。真に感服いたしました。噂通りでございます」
大人顔負けの頭脳って、そりゃあ今や七歳だけど実際は二十七歳だからね。
精神年齢が違うよね。
たぶんあんたより年上だよ。
つか礼を欠かさないのも、ふるまいってのも早く当主になりたいからなんだよなぁ。
俺だって一生懸命だっての。
「・・・・・・花開院、是光殿と言ったか」
「はっ」
「・・・かしこまらないでくれ。俺ももうかしこまるのは疲れた」
「・・・え・・・?」
何を言っているのかわからないというように、疑問符を浮かべる花開院。
大の大人がわかりやすすぎなんだよ。
「だから、たかが七歳のガキにかしこまるのは止めてくれって言ってんだ。俺はこれからこの家の次期当主として話さない。俺個人として話すから、あんたも素で行こうや。あ、それともあんた年上だしで俺が敬語を使うべき?」
「い、いえ・・・私に敬語は使わなくて結構です」
んー、こういうタイプって無理やりじゃ敬語は取れないんだよねー。
面倒臭いしこれでいっか。
さっさと本題に入ろっと。
「あー、あのさ。あんたがどれほど俺を褒めようが、俺自体は全然そんなことないんだよ。姉上一人守れない。頭脳がどれほどあろうが権力がなけりゃ意味がない。どれほどそれらしく振舞おうが俺は強くもない。礼を忘れないのは俺がガキだから」
子供であればあるほど、俺は頭を下げなければ生きてはいけないから。
「・・・・・・何故、それを初めて会った私に?」
「あ、そういやなんでだ?んー・・・・・・わかんないからその質問は保留で」
「ほ、保留ですか・・・」
「うん、そう。俺が話したいから話したとでも思っといて」
「は、はぁ・・・」
「なあ、あんたから見て俺ってまだ・・・全然ガキだよなぁ・・・・・・」
「まだ齢七歳ですから・・・」
「お、意外とはっきり言うねぇ」
「も、申し訳ございま―――」
「あー。いい、いい。むしろそれでいいんだ。」
「・・・・・・・若様は早く大人になりたいのですか?」
「うん。大人になれば当主になれる」
「当主・・・・・・」
「そ。あんたもわかるだろ?俺の姉上が鳥かごの中の鳥状態だってさ。だから俺が早く親父から当主の座を奪って、姉上を自由にさせてあげるんだ」
「・・・・・・そのために、当主に?」
「当たり前だろ。それ以外の理由なんてないし。その理由がなかったら当主なんて継がねぇよ。面倒だし」
「そうですか・・・。あなたは優しいのですね」
「うわ、やめろって。むず痒いから!とりあえずあんたは姉上を守ってくれればいいの!親父や俺のことはどうでもいいから、とにかく姉上な!以上!ほら、出てった出てった。勤務に戻れ」
真面目な顔して俺のこと優しいとか言うからこっちが恥ずかしい。
無理やり部屋から花開院を押し出して、俺は息を吐いた。
あ、顔赤くなってないかな。