鬼灯の冷徹夢小説

□2ページ
1ページ/1ページ

いつもの通りにいつもの時間に学校へ通う。



意識しなくても、もう体が覚えている道。



しかし、いつも通りじゃないものがそこにいた。



シャーっと威嚇してくるそれは、きっと普通の女子なら悲鳴をあげているだろう。



雪乃「・・・蛇?なんでこんなところに?」



よく見ると淡黄色の体色に、4本の黒い縦縞模様が入っている。



だが、一番異様だったのはその蛇の真正面に立っている男。



細身だが、180センチ半ばくらいの意外とガッシリした体つき。



帽子をかぶっており、顔に影を作っているせいかすごく怖い。



なんていうか顔が整っていそうなのに、目が怖い。



その人は私に気づいたようでゆっくり視線を、こちらに移す。



「……」



雪乃「・・・・・・」



「・・・・・・」



雪乃「・・・・・・」



なにこの無言。辛い。



とりあえず何か話そうと試みた。



雪乃「・・・えっと、あの、なんで蛇を睨んでいたんです?」



うん、おかしい。



自分でも話の切り出し方がおかしいのはわかるよ。



だれか私に言語力と冷静さをください。



「・・・睨んでいたのではありません。見ていただけです」



見ていた?



大人の男の人でも、蛇なんて怖がると思っていたが案外そうでもないのだろうか。



それともこの人が変なだけだろうか。



雪乃「蛇が珍しいですか?」



そりゃ珍しいだろう!・・・自分にツッコミをいれたかった。



日本であんまり見ないよね蛇って。



というか自然に皆避けてるよね。



結構可愛いのに。



「いえ、それほど珍しくは。ただ、何故こんなところにいるのか気になっただけです」



雪乃「誰かが飼っていたけど、逃げちゃったか……もしくは捨てられたかですね」



後半は想像したくなかったけど、どちらかというとそっちの方が可能性が高い。



嫌な時代。



自分の勝手で飼い始めて、それで勝手に捨てるなんて。



まだ決まったわけではないけど。



「後者だった場合、必ずその人は不喜処地獄に落ちますね」



雪乃「ふきしょ地獄…?」



地獄というのはわかるけど、ふきしょ?ってなに。



「動物を虐待したりした人が落ちる地獄です」



雪乃「なるほど、要は動物の敵が落ちる地獄ですか。自業自得ってやつですね」



この人はそういうオカルト系に詳しい人なんだろうか。



「……こういう話を真面目な顔をして応えたのは、人間ではあなたが初めてですよ」



……?



言っている意味が半分位分からなくて、私は首をかしげた。



「私の話、馬鹿らしいとかおもいません?」



雪乃「何でです?確かにあるっていう根拠もないですけど、ないっていう根拠だってないのに否定なんてできませんよ。死んでみればわかることじゃないですか?」



「ええ、もっともです」



あ。彼が少しだけ嬉しそうな顔に見えたのは、私の気のせいかな?



雪乃「それに不喜処地獄があった方が、私の死後の楽しみが増えますからね!」



「……?」



雪乃「ふふん。死んだらそこに行って、奴らを高みの見物ですよ。ま、そのためには悪いことはできませんけどね」



イタズラが成功したような顔で笑うと、彼も頷いた。



「きっとその景色は見ものです」



道端で蛇を眺めながらこの会話。



明らかに変だけど、楽しいな。



この人とは気が合いそう。



もっと話してみたいな。



…あ、ダメだ。学校行かないと。



うわ、空気読んでよ登校時間。



雪乃「ヤバイですっ登校時間がかぎりなくヤバイです。じゃあ、私はこれで」



「学校ですか。頑張ってください」



雪乃「…!はいっ。…あ!あの、名前は…」



さっきあったばかりの人に名前を聞くのはダメかな。



でも、もっと話してみたい。



でもでも、時間がない。



でもでもでも、これで別れたら二度と会えない気がする。



だから。



何か繋がりが欲しかった。



「…鬼灯です」



雪乃「鬼灯さん……。私は睦月雪乃です。また会えたらいいですね!」



私はしっかりと頭に彼の名前と顔を焼き付けながら、学校へと急いだ。



この時のことを思い出すとすごくドキドキして、熱い。



学校についてもほとぼりは冷めなかった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ