SCREAM

□2.氷帝学園へ
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空条さんと会った次の週から、私は氷帝学園に編入という形で通うことになった。
今住んでいる家から通うには遠すぎるだろう、と一人暮らしを勧められ快諾。
両親にも一応伝えはしたが全く反対しなかったのでよしとする。
仗助や康一くん達には、「家庭の事情で引っ越す」とだけ伝えておいた。
あまり心配もかけたくないし。

スピードワゴン財団によるフォローと全面的なバックアップ(主に金銭面)をしてもらえるので非常に助かる。
新しい居住地となったマンションの一室を見渡す。
元々持ち物も少なかったので引っ越しはすぐに終わった。
物がなさすぎる気もするけど、まぁいいか。

椅子に座り、承太郎さんに貰った資料に目を通す。
一枚、二枚…とめくっていき、そこで手を止めた。
あの時、承太郎さんが会ったという二人の生徒。
すなわち男子テニス部員とマネージャーの二人分の情報が、そこには事細かに記されていた。

「跡部景吾と蜷川紫、ね…」

跡部の方は同じ学年だが、蜷川は一つ下、つまり二年生。
跡部の資料を手に取る。顔写真を見る限り、中々に整った顔をしているみたいだ。

「へー、部長なんだ」

しかも財閥のお坊ちゃんで生徒会長までしている。
いくらなんでもスペック高すぎじゃないかな。
世の中には凄い人もいるもんだ。

蜷川は…って、この子一人でマネージャーしてるんだ。
200人いるテニス部にたった一人のマネージャー、か…やっぱり引っかかる。
ま、いいか。
どうせこれから全部確かめることになるんだし。


 * * *


「着いた…」

氷帝学園中等部。
校門のその文字を確認する…までもない。
中学校と呼ぶにはちょっと大きすぎるんじゃないだろうか、この校舎。

それにしても、家から学校が近くてよかった。
遠かったら確実に遅刻するだろうし。
さて、まずは職員室を探さないと。
広すぎて下手に動き回ったら迷いそうだけど…

「んー?オメェ何してんだ?」

きょろきょろと辺りを見回していたら、後ろから声を掛けられる。
振り返るとそこには、金色でふわふわした髪の、眠そうな顔をした男の子が立っていた。

この人は確か…芥川慈郎。
軽くではあったけど、空条さんの資料に載っていた。
それにしても、こんなに早くテニス部員に会えるなんて…運がいいのか悪いのか。

「えーっと、職員室を探してて…」
「そーなの?じゃあ俺が案内したげるー。あ、ちなみに俺は芥川。芥川慈郎ね」

ええ、知ってます。なんて言えないけど。
代わりににっこり笑って自己紹介だ。

「私は篠原皐。案内って…いいの?」
「別にEーよ。皐ちゃんね、よろしくだCー」
「うん、よろしく」

これってなかなかラッキーなんじゃ…調査の手間も省けそうだし。

それにしても分厚いラケットバッグだなぁ。
元いた中学のテニス部が持っているバッグはもっと薄くて軽そうだった。
氷帝のような強豪校じゃなかったから、当たり前と言えば当たり前か。

「それ…重くない?」
「ん?あぁ、大丈夫だCー」

朗らかにそう言ってぽんぽんと優しくバッグを叩く芥川くん。
その様子を見ていたら、自然に言葉が口をついて出ていた。

「…好きなんだね、テニス」
「大好きだC!」

明るい笑顔につられて、私も微笑む。
すっかり眠気の覚めた様子の芥川くんに連れられて、校舎の廊下を歩いた。


 
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