SCREAM

□1.プロローグ
1ページ/3ページ

 
夕日が足元のアスファルトを朱に染めている。
学校の帰り道。
一人でだらだらと歩いていたら、いつの間にか日が暮れそうになっていたらしい。
家に帰ってもすることなんてないし、暇なだけだから別にいいんだけど。

「…皐?」

後ろから名前を呼ばれて振り返る。
そこには私の数少ない友人の二人がいた。

「仗助!億康!」

何週間かぶりに会った二人に駆け寄る。
中学生と高校生がこうして偶然出会うことなんてないに等しいから、純粋に嬉しい。
年齢の差はたった1つなのに、こういうところで少し距離を感じてしまう。

「久しぶりだなー皐。元気か?」
「うん、いつも通り元気。今日は康一と一緒じゃないの?」

いつも三人で行動しているイメージがあったから、疑問に思って聞いた。
そんな私の頭を仗助の大きな手で撫でられる。
子ども扱いされるのはあんまり好きじゃないけど、こういうのはちょっと嬉しい。
そのままされるがままになっていると、手が億康のものに代わる。

「あいつは由花子とデートだってよ。ったくよぉーこの後三人でファミレスかどっか行ってダベるつもりだったのによぉ」
「相変わらずラブラブみたいだね、あの二人」
「あーラブラブだよラブラブ」

冗談ぽく茶化したつもりが逆効果だったらしい。
億康はケッとやさぐれた様子で乱暴に頭をかき回す。私の頭を。

「ちょっ、やめてよ」

抗議をしてもその手は中々止まらない。
助けてと目線で仗助に訴えるけど、奴は面白がってこっちを見るばかりだ。
それでも何とか抵抗し、億康の手から逃げる。
ぐしゃぐしゃになった髪を手ぐしで整え、はぁっと息を吐いた。

「おいおい溜息つくなよ皐。幸せが逃げるぜ」
「誰のせいだと思ってんの」
「億康だろ?」

さらっと言うけど、助けてくれなかったあんたも溜息の原因に含まれてるからね。
心の中で言って仗助を睨みつけてやる。

「うおっコエーなぁ」
「うるさい。ほら、億康も!いつまでも拗ねないの」
「別に拗ねてねぇっつの!」

じゃあ何なんだ、それは。
どこからどう見ても康一くんを由花子さんに取られて拗ねているようにしか見えないんだけど。
とりあえずはいはいと適当に流しておく。
きっと今の私は半眼にでもなっているだろう。

「あーもう、皐!こうなりゃ康一の代わりだ、お前が一緒に来い!」
「代わりって、えー…」

誘ってもらえるのは嬉しいけど。
友達を作るのが下手で、通っている中学校に仲のいい子がいない私は、こういったことを中々したことがない。
だから行ってみたいという気持ちはある。
でも、今日は。

「ごめん、この後用事あるから…」
「マジかよ!?いやそこを何とか」
「おい億康、無理やり誘うんじゃねーよ」

仗助の手が億康の後頭部をべしんとはたく。
大げさに痛がる億康に、苦笑いが零れた。
うん、でもすっごく嬉しかった。
というか遊びに誘われるのなんて初めてじゃないだろうか。

「ん、だからまた今度。折角誘ってもらったのにごめんね」
「いーよ、気にすんな」
「ま、仕方ねーか…次は絶対行くぞ!」

な、と二人にもう一度頭を撫でられ、私は自然と頷いていた。


 
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ