SCREAM

□1.プロローグ
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「スピードワゴン財団の調査によると、最近とある学園の中等部とその周辺で、事件や事故が立て続けに起きているらしい。被害者や加害者は全てその学園に通う生徒とその家族や親戚だ」

スピードワゴン財団…ジョースター家のバックアップをしている財団、らしい。
ちなみにこれも仗助から聞いた。
黙って話を聞きながら窓の外を見る。
今夜は快晴で、雲一つない夜空に肥えた月が浮かんでいた。

「最近だと…テニス部のマネージャーが虐められてその虐めの主犯格と思われる女生徒が自主退学した、らしい。先々週あたりのことだな」

……「虐めの主犯格」が「自主退学」?
どこか引っかかりを感じる。

「確かに…妙ではありますね。でも、それだけじゃ…」
「あぁ。だから先日、私自らその学校へ調査に行ってきた」

いつしか車は市街地を抜け、山道を走っていた。
街灯の少ない道路を、ヘッドライトと月明かりが照らしている。

「その時に、少し気になることがあってな」
「気になること?」
「テニスのラケットバッグを持った少年と、タオルの入った籠を持った…恐らくマネージャの少女を見かけた。それだけならなんてことはねえんだが――彼ら二人の背後に、スタンドがいた」
「…へぇ」

なるほど。少し繋がりかけてきたかもしれない。
事件のあったテニス部、そしてそのテニス部に所属するスタンド使い…か。

「それで私を――というよりは、私のスタープラチナを見た瞬間か。そのスタンドは姿を消した」
「自分がスタンド使いだとバレてはまずいことが、何かあったかもしれない…と?」
「…私の考えでは、な。まだ確証も何もねえし、根拠が弱い。間違っている可能性も十分にある。――それでも、怪しいと踏んでいる」

前方の信号が黄色に変わった。
車が緩やかに停止する。

「もう前のような惨劇を繰り返すわけにはいかないからな…そういった芽は早めに摘んでおきたい」

そこで、と顔をこちらに向けた彼は、平素と同じ落ち着いた様子で口を開く。

「篠原皐、君にはその学園――氷帝学園中等部に編入し、そしてそのスタンド使いが誰なのかを調べて貰いたい」

――空条さんには、数多くの場数を踏んできた経験、そして鋭い洞察力がある。
信用するには事足りるほどの。
私もさっきの話を聞いて何か怪しいと思い始めたし、正直言って大いに興味を持っている。
力になれるのかという不安はあっても、頼みを断る理由はない。

「わかりました、空条さん。引き受けさせてもらいます」
「君なら、そう言ってくれると思っていた」

何のためらいもなく言えば、ふっと空条さんの口元が緩む。
こちらを見つめる彼の目が思ったよりずっとやさしくて、私は思わず息を呑んだ。

「さっきも言った通り、スタンドはただ戦うだけが能じゃあねぇ。君のスクリームなら潜入なんかはお手のもんだろう」
「だから私を?」
「そうだ。頼んだぞ、篠原」

再び車を発進させた空条さんの雰囲気は、先ほどと同じ落ち着いたものに変わっていた。
合わせるように私も無言で頷く。
そうして再びウィンドウから外を眺め、まだ見ぬ氷帝学園に思いを馳せた。




 
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