ぬらりひょんの孫

□Cお料理をしよう!
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母さんの押しの強さの前にことごとく粉砕したオレは、あれから直行で台所へと引きずり込まれた。
母は強しと言うけども、別の意味で最強だったよ家の母親は!可愛い顔して「ね?」って言ってくるあたり反対できないじゃないか!
そんなこんなで、オレは現在空の酒樽の上に立たされている。明らかにブカブカなエプロンを強引に紐でぐるぐる巻きにして着せられたりもしていた。
うん。これはなかなか可愛いエプロンだ。肩のフリフリと胸のアヒルのアップリケが魅力的………………複雑!オレ今男だから、こんなプリティーなもん着せられてもあんま喜べないよ!

「アキラ、包丁持つときは、こうやって猫さんの手を作るのよ」

でも、なんだかんだこうやってまた包丁握れるのが嬉しかったりするのだ。
むふふふふ。

「こう?母さん」

「お上手です!アキラ様!」

うーん、本当は教えて貰わなくてもわかるんだけどね。ここはあれだ。「今までお料理したことなーい」っていう状況を作り出さないといけないからさ!

あー、でも、一通り教えて貰ったから、少しくらい本気出しちゃってもいいかなぁ?

「母さん、もしかして今日はお鍋なの?」

調理台の上に用意されているのは、組員全員分の野菜たち。
白菜と春菊とネギと、あ、えのきもあるぞ。

「そうよ。寒いから、みんなでつついたら暖まるわよ〜」

「いいじゃん、美味しそう。何の鍋にするの?」

「そうねぇ、水炊きなんてどうかしら?あ、ちゃんと氷麗ちゃんの分は冷たくしておくわね」

やっぱりそうなんだ。
確かに、氷麗が作った料理はいつも凍ってるし。シャリシャリな茶碗蒸しは実に興味深い食感だったなぁ。
美味しいんだけど、普通温かいはずのもんがああにも夏仕様になっちゃうと……………………ねぇ。

「そうだ。ねぇ母さん、昨日の煮物に使った大根と人参ってまだ残ってる?」

「残ってるけど、もうほとんど使っちゃったわよ。何に使うの?」

「オレ、「飾り切り」やりたい!」

「え?アキラ様、そんなこと出来るんですか?」

「うん!そうだよ!そんなに長さ要らないし、大皿に盛り付けた肉の上にでも添えればきっと綺麗だよ!」

それから、オレは丁度良く残っていた昨晩の大根と人参を冷蔵庫から取り出し、一欠けづつ適度な大きさに輪切りにして切り離した。
それぞれに細かく刃を入れて、目的の形へ近づけてる。
子供用包丁では少しやり辛かったんだけど、仕上がりが案外綺麗だったから、まぁまずの出来映えということにしときましょうか。

そして、「オペ終了」みたいな顔をして包丁をまな板の上に置き、オレは完成した「菊の花」の飾り切りを眺めたんだ。

「どう!?」

と、得意気に感想を求める。だけど、返ってきたのは…………………

「えっと、アキラ様って、お料理初めてなんですよね?」

という氷麗の言葉と唖然とした表情だった。
うわぁぁぁぁぁっ!!
オレの馬鹿ぁぁぁぁぁぁっ!!!
調子に乗りすぎたぁぁぁっ!
なんてことしちゃったんだ!たかが四歳児がこんな高度な技使えるわけないじゃないか!
チートにも程がある!!!!
違和感マジ半端ねぇ!

「あれだよあれ!ほら、オレ4時になるといつも決まって料理番組見てるじゃん?何時だったっけなぁ、「飾り切り特集」ってのがあって、そこで切り方の紹介してたんだよ確か!!いやぁ、そん時見た飾り切りはきれいだったなぁ」

とりあえず弁解してみる。
これで「ああ、そうなんですか」と納得……………しませんよね!氷麗の顔、まだめっちゃ引っ掛かってますってな感じだもの!
引っ掛かってるよ!!魚の小骨的なものむっちゃグサグサしてるよ!!

「あら、そうだったの!!凄いわねぇ!お母さん驚いちゃった!」

嘘ぉ!
母さんは信じちゃったの!?
なんかもう、全てを消化しちまった感超出てるんですけど。

ああもう!!この際、氷麗も信じちゃいなよ!
な!





それから、オレたち三人は夕食の準備を続けた。
氷麗の腑に落ちてなさそうな顔も、また何時ものニコニコ顔に戻ったし、楽しかったから結果オーライ?
他の女妖怪さんたちが来て、オレはお役御免になっちゃったけど、総大将の息子の隠れた才能?発見のおかげで、暫く台所はその話で持ちきりだったそうな。
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