ぬらりひょんの孫

□Cお料理をしよう!
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「はい、アキラ。プレゼント」

と、突然母さんがオレに包みを渡してきた。薄目だが、コツコツとしていて硬い。
………え?プレゼント?どうしたの急に。

「…………母さん、クリスマスにはまだ少し早いよ」

そう、思わず言ってしまったオレは悪くないはず。だって、母さんが唐突すぎるんだ!

気持ちのいい午後だった。相変わらず風も空気も冷たかったが、珍しく雲が無く快晴で絶好の外遊び日和だった。
昨日降り始めた初雪は親父の言った通り見事に積もり、今やオレの膝まで積もっている。都心だというのに珍しいことだ。
保育園は今日から冬休み。前の世界からカウントすれば二度目の保育園、長期休みとなると数えきれないが、やはり初日となるとテンションは上がるものだ。と言うことで、昼食後寒さに強い氷麗を連れて、リクオと二人雪合戦を始めた次第である。
事実、オレはトータル二十歳越えなのだが、何故かこういう遊びも楽しいと感じるのだから若返りとは恐ろしいものだ。

「え!?今日って、もしかしてクリスマスだったんですか!?」

そう言ってわたわたと駆け寄って来たのは氷麗だ。母さんがオレにプレゼントを渡していたのを見て、今日がクリスマスだと勘違いしてしまったようだ。

「どうしましょう!申し訳ありません!!わたし、アキラ様とリクオ様のプレゼント用意していませんでした!」

「いや、だから今日はクリスマスじゃないよ、氷麗。それはまだ先のイベントだから」

「あれ?そうだっんですか?じゃあ、なんで若菜様は…………」

すると、母さんは口に手を当てて、イタズラに成功した子供のように笑った。ほんと、この人はいつまでたっても茶目っ気を忘れないよなぁ、と思ったんだけど、口には出さないでおこうっと。

「気分よ気分。たまにはこういうサプライズもいいでしょ」

だが、この状況を黙って見ていられるはずがないのが、弟のリクオだ。
兄だけがプレゼントを貰って、自分は何も貰っていないのが嫌らしい。

「お母さん、僕のは!?」

と言って母さんのコートの裾を引っ張る。
まだまだ子供だなぁ。あ、オレも子供だった。

「ちゃんとリクオのもあるわよ〜」

そして、ポケットの中から出てきたのは、手のひらサイズの包みだった。多分、おもちゃの車とかかな?と予想。

「リクオ、母さんにお礼言いな」

「ありがとう!お母さん!」

「オレもありがとう。嬉しいよ」

すると、お礼を言うやいなや、リクオは「おじいちゃんに見せてくる!」と、ダイナミックに長靴を脱ぎ捨てて縁側から屋敷へ入っていった。

「リクオ様はほんとに元気ですね」

氷麗がポカンと口を開けたのも無理もない。
それから暫くリクオのマシンガンのような元気さに動きを止められた一行だったが、オレの言葉によってまた我に帰ってきた。

「ねぇ、母さん、この包み開けてもいい?」

「もちろん、良いわよ。あ、でも少し気をつけてね」

「気をつけてって、危ないものなの?これ」

「いいから!ほら、見てみて」

押しの強い母さんに負けて、うーんと唸りながら包みを広げる。
そして、綺麗な花柄の包装紙の中から出てきたのは…………………包丁だった。

「………………母さん、これで誰かを刺せと?」

いやいや待って!おかしいでしょ!子供へのプレゼントが包丁って!?
オレにどんな教育施そうとしてんのこの人は!?
………あれ?でも、この包丁、普通のものと違って小さい。刃先も丸いし…………。これはもしや、「子供用」というやつですか?
試しに透明ケースから出し、青色の柄を持ってみる。
うん、流石は子供用の安全設計。サイズぴったりで手に馴染むぞ。

「アキラって、いつもお母さんたちが料理してるところ、お台所の外から見てるでしょ?」

やっぱり向こうも気付いてたか。そりゃ、目立つところにいたもんな、オレ。

「うん」

「だから、アキラもお料理したいんだろうなって思って、アキラ用に包丁を買ってきたの」

嘘!!もしかしてオレの思ってること見透かされてたの!?料理したいって誰にも言っていないのに。
なんか、母さんに勝てる気しないよ。

「え?アキラ様、お料理がしたかったんですか?」

氷麗が目を丸くして問いかけてきた。

「うん。だから、いつも見てたんだ」

「それなら、お声をかけて下されば、私がご一緒させて頂きましたのに」

「でも、オレまだ小さいから調理台に手が届かないし、だからって台なんか使えば帰って氷麗や母さんたちの邪魔になっちゃうよ」

ただでさえ毎日忙しそうにしてるのに、これ以上煩わしい思いをさせたくないなぁ。
苦笑を漏らしながら頬を掻けば、母さんがオレの頭を優しく撫でてきた。

「まったく、あなたは気遣いが上手な子ねぇ。でも、子供のうちは、親に対して気兼ねしちゃダメよ」

そして、ねっ、と笑いかけると、今度はオレの頬っぺたをぐりぐりと撫でたんだ。
うー、くすぐったいよー。

「よし!!それじゃあ今から夕食の準備にかかりましょう!」

「え!?やるの!?今から!?」

「もちろん!今から始めれば、時間がかかったって大丈夫でしょ?他の女妖怪さんたちが来る前に急ぎましょう!氷麗ちゃんも手伝ってくれるかしら?」

「わかりました!!」

えええええええっ!
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