ぬらりひょんの孫

□B総会に行きたい!
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前に一度、総会に連れて行ってくれと親父とじじいにお願いしたことがあった。その時は山吹さんと約束を交わす前で、ただ興味があっただけ、というのが実のところ理由だったのだ。
それを見透かされたのかどうかはわからないが、当時は駄目だの一点張りで一行に許してくれなかった。

たから、今夜はこっそり覗きにいってやる!
見つかれば親父やじじいに怒られてしまうだろうが、その時はその時だ!恐れるなオレ!

それに、今回は前のように、ただ興味があったから、と言うわけではないのだ。オレは乙女さんと約束した。親父を助けるだけではなく、組のみんなも守ると大見得をきったのだ。大口を叩いた手前、約束は必ず守らなければならない。
やってやろうじゃないか!ここでへこたれるようじゃ、男じゃないぜ!元女だけどな!
そのためには、組の幹部連中の顔も覚えておかなければならないだろう。

ちゃんとこの意思を親父やじじいに伝えれば、総会へ出ることを許してくれるんだろうけど、組を守るなんて口を聞けば、すぐさま三代目候補予定に担ぎ上げられてほいほいと予定から候補にされ、さらには三代目にの仕上げられかねない。

リクオを差し置いてそんなこと出来るかぁぁぁぁ!現にリクオは、僕が三代目になるんだって意気込んでるじゃないか!!

だからこっそりと、いざ見つかればただの興味本意だったということにして大人しく叱られようと思う。

そうこうしているうちに、視線の先に大広間へと繋がる襖が見えてきた。他の部屋の襖よりも豪華な絵がそこへ描かれているせいか、余計に威圧感が増している気がする。襖の白が闇にぼうっと浮かんでおり、さらには床の冷たさが一層オレの背筋を凍らせる。

……………ううう。これが大物妖怪が凝り固まって出来た妖気ってか?

それからオレは、大広間のすぐ横の部屋の中へそっと入り、そこから縁側へ抜けると目的の部屋の障子に手をかけた。
だってしょうがないじゃないか!堂々と廊下から覗いていたら、いつ給仕人の女妖怪に見つかるかわかったもんじゃない!

すーっと、少しだけ、少しだけ。僅かに開けた隙間から、そっと中の様子を覗きこんだんだ。

わっ、すごい!妖怪がいっぱい!
あと、超怖ぇぇぇぇぇぇっ!めっちゃ強面ぇぇぇぇっ!本家の妖怪たちの顔も相当怖いと思ってたけど、流石は各地を納める大妖怪!格が違うぅっぅぅっ!
………………やべっ、チビりそう。

内心ビビりまくってはいたが、ここまで来たら後に引くわけにはいかない。どうにか心を落ち着かせて、広間の中をぐるりと見回したんだ。

あっ、あれってもしかして牛鬼!?うわぁ、スッゴいダンディーでイケメン!!親父とはまた違うかっこよさだなぁ。そろばん坊もいる!やっぱり親父ば上座の一番前か。その横へじじいも座っている。じじいは大御所らしく真一文字に口を結んで話を聞いているようだが、親父は煙草を吹かしながらゆったりと構えていた。
それからそれから…………


最初は怖かったけど、なんだかだんだんそんなことどうでもよくなってきたんだ。論議の内容は、しのぎのことや各地の様子など、近況報告がどうやら主だった旨のようだった。
幹部の顔を覚えておくって目的は達成出来たが、それに加えてこんなにテンションが上がるとは思いもよらなかった。

だから気付かなかったんだ。
背後に迫った黒い陰に。
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