ぬらりひょんの孫

□@ 予防注射を受ける
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幼児生活を初めてから約二年と少し。
赤ん坊になってからと言うもの、痛みに対しての体制が弱くなった。

それひ加え涙腺も脆くなっていから、一度転べば、猛烈な痛みが患部を襲い、意思に反して止めどなく涙が零れ
落ちるのだ。

これが注射ともなると威力は絶大。初めて予防注射を受けたときなんか、羞恥心を忘れ泣き叫んでしまった。
予防注射には毎回鳩が来てくれるのだが、薬品滴る針を光らせ注射を持つ姿を想像すると、素直に喜べない。
最初鳩に会ったときは、テンションマックスだったのだが、それを断ち切られた時の切なさを声を大にして、拡声器を使って表現したい気持ちになったのを覚えている。
注射ごときと、舐めてかかっていた己を悔やみたい。

「こらアキラ。早く起きてご飯食べて、身支度しないと鳩さんが来ちゃうでしょ」

いつもは喜んで飛び付いている母さんの声でさえも、聞こえないふり。
障子が開け放たれ、こうこうと朝日が部屋に差し込むが、オレの心は藻の浮かんだプールのごとく濁りきっている。
布団でからだを包み込んで、寝巻きのまま完全防御体制を決め込み籠城する作戦だ。
あの憎き注射ヤローから逃げきろうではないか!
…………はい、すいません。悪ふざけでした。

「やー。聞こえないもん。オレ、今忙しいんだもん!迫り来るちゅうしゃマンから逃れなきゃダメなんだ!」

「これは。アキラ様はまだ起きられないようですね」

「ごめんなさいね、首無君。この子ったら鳩さんは好きなのに、注射になるとこうなっちゃって。お世話かけるわね」

「いえいえ、いんですよ若菜様。人間の子は、注射が嫌いなものと存じております」

「おう若菜。アキラはまだ起きねぇのか?」

なんて、母さんと親父、それに首無の会話が聞こえてくるが、オレは知らん!知らんぞ!

「おーい、アキラ。男だろ?男なら男らしく、注射くらいバチっと耐えてみやがれ」

といいながら、布団でくるまったオレの背中にあたる部分をポンポンしてくる親父。
けど、一つ言いたい。

なんで声が笑ってんだよ!
明らかに楽しんでるだろテメェ!!
あれか?プルプルしてる様子がおかしいのか!?
そうなんだろ!?

だから、オレは言ってやったんだ。
親父に効果抜群のあの殺し文句を。

「…………親父なんて、大嫌い」

瞬間、布団の外からビシリとヒビが入るような音が聞こえてきた。

「あーはいはい。二代目はちょっとこっちに退けてくださいねー。邪魔ですから。」

と、首無に容赦ない言葉を投げ掛けられながら、二代目総大将が背中を丸くして部屋を退散していく様子をしめしめと作った小さな隙間から見ていたのだが、それから間もなく、オレは布団から引きずり出されてしまいました。
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