ぬらりひょんの孫

□A 運動会
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「アキラ様ぁ!何処ですかぁ!」

とある日の早朝。本家屋敷の裏庭に、オレを呼ぶ声が響いた。

「おかしぃわねぇ、何処へ行かれたのかしら?」

「お時間なのに、そろそろお出になられないと………」

そんな氷麗と毛嬢楼の会話が、屋敷の縁側から聞こえてくる。

「もうそんな時間かぁ。もうちょっとやりたかったんだけどなぁ」

なんてぼやきつつ、持っていた木刀を足元の植え込みの下へ隠しておいた。
独自に剣の練習を初めて早一年。鈍っていた身体の感覚もすっかり戻ってきた。
我ながら頑張ったと思うよ!毎日毎日木刀振って、もうすっかり竹刀ダコならず、木刀ダコだらけだよ。
これが痛いんだなぁ。風呂に入る時に、こう、ジュワッて感じが。
そういや、最初は木刀振ってるとこ誰かに見つかってしまわないか気になってしょうがなかったなぁ。まぁ、それでも、丁度いい高さの木々に囲まれてて、周りから死角になる穴場を見つけてから、気が楽になったもんだよ。
ホント、個人的な感想言わせてもらえばかなりビクビクしてたよ。予防注射受けたときの二の舞にならないかとかさ!

「アキラ様。お時間ですので、門の方へ急ぎましょう」

おっとこれは、首無の声だ。
いやぁ実はな、ホントのこと言うと、たった一度見つかっちゃったことがあるんだなぁ。
穴場を見つける前だったから、しょうがないっちゃあ、しょうがないんだけど…………。
それが首無だということだ。

「アキラ様。そろそろ行きましょうか」

「うん、わかった。今日も誰にも感付かれてなさそうだし、ひと安心だよ」

「誰にも言わないでほしいって、アキラ様との約束ですしね。この首無、口の固さには結構自信があるんですよ」

そう言いながら、口に人差し指を当てる首無。
イケメン!めっちゃイケメン!このポーズが絵になる人って、正直羨ましいとしかいえないよ!チクショー!

「ほらほら、若菜様もアキラ様のこと探しておいででしたよ。二代目も、最新式のビデオカメラ片手に目に見えてウズウズしてますから」

「全く親父つたら。保育園の運動会ごときにそんな興奮しなくてもいいのに。恥ずかしいなぁ」

そうやって、秘密の約束みたいに首無とクスクス笑いあいながら、俺たちは屋敷へと向かったんだ。





今日は運動会です。
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