ぬらりひょんの孫

□目が覚めると
1ページ/4ページ




疲れを吐き出すように息をつくと、どっと眠気が押し寄せてきた。
手の込んだ仕込みも漸く終わり、ふと、厨房の時計を見上げれば、既に深夜を回っているではないか。

ふらつきながら厨房の照明を落とし、隣の更衣室へと向かったオレは、まるで墓から這い出した亡者のような顔をしているだろう。

どうも今晩は。
わたくし、都内のとある料亭で日々包丁を振り回し、おっと間違えた、駆使しております料理人にございます。
自らを『オレ』と称しておりますが、別に男ではありませんよ。
所謂、『オレっ娘』と言うもので性別はれっきとした女である。

あー、眠たい。おー、眠たい。

そして、情けない文句を脳内で連呼しつつ静かに更衣室の扉を閉め、もそーっと振り向いた先におわすソレを認識したとたん、己の中で一つの邪心が芽生えた。

実はこの更衣室、端に大きなソファーがあるんだわ。ちょっとボロッちいけど、座り心地は結構良かったりするのだ。

あーっ!
このままこのソファーにダイビングして、朝まで平和な眠りを貪りたい!

でもでも、料理人たるものちゃんと自宅へ帰って風呂に入らなければ、どう捻ろうが不衛生!匂う!きっと!

それに、今夜久し振りに見ようと用意しておいた『ぬらりひょんの孫』DVDも待っているのだ!

見たい!実に見たい!
会いたいよー、ぬら孫!

と、こんな風に、天使と風呂入らずに寝たい悪魔がせめぎあう脳内戦争を繰り広げていたが………………、



勝者悪魔!!!

何かが吹っ切れたオレは、潔く前掛けを脱ぎ捨て、清々しい気分でソファーへとダイビングした!

マイ ダーリン 更衣室のソファーぁぁぁぁぁ!

ぼっふんっ。

それから間もなく、規則正しい寝息をたて、オレは深い眠りに落ちた。








そして、二度と目覚めることは無かった。









始まりましたぬら孫トリップ!
暇潰しにでも見ていただければ幸いです。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ