ぬらりひょんの孫
□Cお料理をしよう!
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奴良組本家の台所は戦場だ。
食事の準備など戦争の極みであり、総会のある晩はもちろんだが、普段でもその慌ただしさたるや一般家庭の比ではない。
本家に住む妖怪たちは、ただでさえよく食べるのだ。それに加え、大家族を越えた大家族と言っても足りないほどの人数が住んでいるので、三食作る女妖怪たちも休む間がない。
そんな中、オレのようなチビが「お料理手伝いたい」なんて言えるわけ無い。
だってそうじゃないか!もう少し大きくなったら大丈夫だろうけど、四歳児の身長じゃコンロやシンクに届かないどころか、冷蔵庫の上段に入っている材料すらろくに取れないんだせ!?
台を使えば出来ないこともないが、人ならず妖怪がバタバタと行き交う場所でそれは邪魔になってしまうし、オレは総大将の息子という立場だから、望んでいなくても周りに気を使わせてしまうに違いない。「アキラ様、手が届かないのですか?私がとって差し上げましょう」とか、「アキラ様、申し訳ありませんが、もう少し台を移動させて頂いてももかまいませんか?」なんて言わせてしまった日には、申し訳無くて泣いてしまうかもしれない!
なら食事の合間に料理すればという話なのだが、下ごしらえに時間がかかる分早めに女妖怪たちが台所に入ってくるためブランクが無い。よってゆっくり料理をする暇など無い。
個人的に、元料理人のプライドが手抜き調理を許さないのだ。
「はぁ〜。料理したいなぁ」
だから今日も、保育園から帰ったあと、オレはいつものように黙って台所の外から中の様子を眺めることにしたのである。
いい匂いがするなぁ〜。今晩のおかずは煮物だな。流石は関東、醤油ベースがしっかりしてる。
なーんてぼんやり考えながら、料理の音を楽しんでいたんだ。
「にぃにだ!」
すると、突然横から最愛の弟の声が聞こえてきた。寒い中、外で遊んでいたのか、指の先が真っ赤になっていた。
「リクオ、お帰り。外で遊んでいたのか?指冷たいなぁ」
自分よりも一回り小さい手をとって擦ってやる。思った通り冷たくなっていた。なんか、氷麗の手みたいだなぁ。
あれ?肩に氷の粒が………。
「外、雪降ってたのか?」
「うん!そうだよ!さっき降り始めてね、明日には積もってるだろうってお父さんが言ってた!」
「そうか。初雪だなぁ」
「はつゆき?」
「うん。一年で初めて降る雪のことを、「初雪」って言うんだよ」
「へー、そうなんだぁ。にぃに、物知りだねぇ」
そう言って、新しい語彙を知った嬉しさに目をキラキラさせるリクオ。
ああ、可愛いなぁ。
と、内心デレデレしてしまうオレはきっと末期だろう。
それから、「小妖怪たちにも教えてあげる」と言って駆けていくリクオの背に、「ちゃんとコート脱いどけよー」と声をかけた。
「はーい!」
そして、弟の元気な返事を聞いたあと、オレはまた台所の中の慌ただしさに目を向けたんだ。