世界地図

□雪
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冷たいとわかっているくせに触りたくなる。
雪にはそんな魔法が掛けられていると思う。
(まぁ私は触るだけで満足しなかったのだけど)
半纏も脱ぎ捨てて雪の上に寝転ぶ。

明け方の冷たい空気が肺を満たす。
雪を踏み、雪に触れた手先足先は殆ど感覚がない。
(このまま寝るとどうなるだろ)
本当に死ぬのだろうか。
「そうだ。」
帯に引っ掛けていた携帯を取り出し電話を掛ける。まだ寝ている時間なのだけどいつも迷惑を掛けられているのだ。たまには仕返しをしてみてもいいはずだ。手がかじかみなかなか操作しづらいがなんとかかかる
「……あっもしもし。イヴァンさんですか?あははおはようございます。……いいじゃないですか。それがですね今こっち雪が降ってるんです。……えぇ。一面真っ白になるくらい。そこで聞きたいんですけど、雪の上で寝たら死にますかね?」
……………………きられた。
なにもそこまで怒らなくてもいいじゃないですか。

ふと上を見ると冬の空が広がっていた。空気が澄んでいて星が良く見える。でも今は見たくない。そんな綺麗なものを体は欲していない。そこでうつ伏せになる。
(雪うさぎでも作ってみようかな)
雪の上に転がったまま雪うさぎを作り出す。かわいらしい雪うさぎを作っては並べ作っては並べ。

どれぐらい時間がたったのだろう
ギュッギュッ……
「ねぇ…君馬鹿なの?」
雪を踏む音が聞こえたかと思うと頭上から声が落ちてくる。
「あら…いらっしゃいませ。電話を切られたから無視して寝られたのかと思いましたよ。」
話しながらも雪うさぎを作る。
「君は……まだいなくなったらダメだよ。だから部屋に戻って。温泉に入って。お茶でも飲んでなよ。」
温かな雨が彼の足元の雪うさぎを溶かす。
「…………フフッ体が冷えきって動けません 」
「なにいってるの?ほら」
ひょいっと体を持ち上げられる。いくらなんでもお姫様抱っこはやめてほしい。
「恥ずかしいんですが」
「文句言わないで。」
そんな言う彼の頬が赤く染まっていたからそっと両手で触って冷たいと怒られて雪に叩きつけられたのを雪うさぎは見ていた。

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