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□巡る思い
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「黎深様、今日という今日は仕事してください!」

吏部侍朗・李絳攸は、昼過ぎになってようやく出勤して来た吏部尚書・紅黎深に向かって怒鳴っていた。

「今日で徹夜は一ヶ月目、一日に一刻でも寝れればいい方、もちろんその間、誰一人として家に帰れていません!このままでは、吏部が崩壊するか、過労死する者が出てきてしまいます!!」

一言でそう言い切ると絳攸は一端口を閉じた。しばらくの間沈黙が続き、パチンという扇の音と共に、黎深が口を開いた。

「ほお。自分達の努力不足を私のせいにするとは、お前も偉くなったものだな。あいにく、私にとってはお前達がどうなろうが知ったことではない。」

絳攸の頭の中で、プチンと何かが切れる音がした。

「…そうですか。黎深様は俺が死んでもいいとおっしゃるんですね?」

「なに?」

「分かりました。今日から三日間、吏部の仕事は全部俺が引き受けます。その間、吏部の者は皆家に家帰し、この一ヶ月の間にたまった疲労をねぎらってもらいます。黎深様も、仕事をする気がないのでしたら、お帰りいただいて結構です。」

「絳攸」

「それでは、仕事があるので失礼します。」

絳攸は、黎深の返事を待たずに吏部尚書室を後にした。残された黎深は、内心とても焦り(もちろん、そんなことは微塵も感じさせずに)、とりあえず府庫にいる兄・邵可の所へ向かった。
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