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□おとぎ話はハッピーエンド
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シンデレラは魔法をかけてもらって綺麗になった。そしてガラスの靴を落としてしまった。そのガラスの靴が王子様とシンデレラをまた引き合わせた。

すなわち、ハッピーエンド。

白雪姫は魔女によって毒リンゴを食べてしまう。でも王子様のキスで目をさます。

すなわち、ハッピーエンド。


あぁ、この世のおとぎ話はハッピーエンドに満ちている。
ずるいなって思っても仕方がない。だって、おとぎ話だから。

でもね、こうやって夢を見ることはさせてくれてもいいでしょう?


きっといつか王子様と巡り会える。

そう信じて私は今日もメイクをばっちりして仕事へ向かう。

外見だけを見て惹きつけられた男どもの相手をする長い長い夜。

私は儚い夜の蝶。

こうでしか生きてはいけないの。


眠り姫は深い眠りにつく。
そして王子様のキスで目をさます。

すなわち、ハッピーエンド。


でも私は違う。
何時ものように目を覚まし、だれもいない部屋でため息をつく。

すなわち、ノーマルエンド。


甘い言葉を浴びるたびに、

それは一体何人に向けられた言葉?

そう思いながら、

私もよ。といい甘い言葉を被せる。

この言葉は何回目?


そんな時、新聞を見た。

あぁ、ハッピーエンドはおとぎ話だけではなかったのね。

新聞もテレビも大きく取り上げられているのは王子様と庶民の婚約。

大学生がプリンセスになるおとぎ話なんて聞いたことがない。


だって、これは現実。


あぁ、そうか。

私は夜しか生きられない。
こんな私がハッピーエンドになるわけないんだ。


溢れることのない涙はどこに消えた?
泣くことを忘れた哀れな蝶。

今日も甘い香りで引き寄せる。


ねぇ、ハッピーエンドってなぁに?


シンデレラはガラスの靴をわざと落とした。
白雪姫は毒リンゴをわざと食べた。
眠り姫はわざと高い塔の頂上で眠った。

きっとハッピーエンドは自分で掴むもの。そうね、なら私は

何を置けばいい?
何を食べればいい?
どこで眠ればいい?


私は儚い蝶。
夜の蝶。

ここでしか生きられない。

自らにそんな力はないの。
あるのは甘い言葉と香り。そして綺麗な外見だけ。

萎れたらそこで終わり。

眠った私をだれも見つけない。

私の持ち物に見向きもしない。


だれも私を認めない。


すなわち、バッドエンド。


それでも私は夢を見る。
そして今日もメイクをばっちりして仕事へ向かうの。



fin
 

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