novel

□背中
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あ、まただ。

目の前に座った背中を見るといつもの黄色い髪。
大学三年になり、普段は医学部の授業をとっているが、興味本位で他学部の授業をとった。
この黄色い髪は毎回のこの授業で自分の前に座る。と、言っても相手が誰なのか、どこの学部なのか全く検討がつかない。
通年の授業で半年経つが未だその状況は変わらないみたいだ。

あら?

ある回の授業。目の前の背中はいつもの黄色い髪のものではない、知らない背中だった。
今日は休みなのかしら…
そう考えると授業に集中しようと試みるがまったく頭に入らない。というか、落ち着かないのだ。

結局、その日の授業は全く集中できることなくおわってしまった。

「それは気になってるってことよー」
親友で他の大学に通ういのに話すと即答された。
「でも、私その人のこと知らないもの。顔もみたことないし。」
「まぁねー。面食いのあんたにしちゃ、顔は大事なんだろうけどね。
たぶん、その背中に惹かれてるのよ。」
「背中??」

たしかに、私の見るあの人は背中なのかもしれない。私はあの人の背中に安心して授業を受けてたのか。
「フェロモンみたいな感じじゃないかしら〜。背中だけであんたを落とせるなんてすごいわよー。まあ来週にでもきいちゃいなさいよ〜」
「んー。できたらね。」
そう短く答え、来週までのお預けになったドキドキをそっと隠していのとの話に花を咲かせた。

来週の授業。
私から話しかけるはずだったのに、あの黄色い髪に先越されたのはまた、別のお話。

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