Kiss

□Kiss!
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「ベク様、これで許して下さい。」

床に正座して、ベクのために買ってきたお菓子を掲げる。だけど、

………………。

あぁ、綺麗な顔が無言だとこんなに怖いなんて……。






【Kiss!】







ことの発端は一週間ほど前。

翌日からの個人の仕事の準備を終え、ギョンスやジョンデとお酒を飲みながら即興でギターを弾いたり、歌っていたりしていたときだった。

「なぁなぁ、カイってどんなキスすんの?」

酔いも回って気分が高ぶった俺は、興味本位でギョンスに聞いてみる。

「ブフッ‼︎‼︎」

「ギョンス大丈夫?チャニョル急にどうしたの?」

びっくりして飲み物を吹き出したギョンスに慌ててジョンデがタオルを渡す。

「いやさぁー、どんなかなぁーってただ思って。」

カァーーーーーーーーーーーッと音が鳴ってるんじゃないかって勢いでギョンスが真っ赤になっていく。

「え?何ギョンス、すっごい赤いよ!なになに、何思い出したのーー?」

「チャニョル!そういうのは普通聞かないの!」

真っ赤になって黙るギョンスを守るみたいにジョンデがギョンスを庇う。

「だってさぁーやっぱ気になんじゃん?される側がどう思ってるかとか。」

「まぁそれはそうだけど…。」

「待て。“される側”ってなんだよ!僕からするとは思わないわけ?」

「え?するの?あっでもギョンス、キス好きそうだもんね。なんか唇がエロいし!」

アハーーッと笑って、ギョンスの唇を指で挟んでぷにぷにする。あっなんか顔真っ赤だし、唇が厚くてタコみたい。本当プニプニ。

「ギョンスの唇、プニプニしてチョー気持ちいい。カイがハマるのもわかるかもー!いいなーキスしたーい!」

「ちょ、チャニョル‼︎‼︎」

慌てたジョンデを尻目に冗談でギョンスに、んーーー♡と唇を突き出した瞬間。

まずドスッという音とともにギョンスの拳がみぞおちに決まり、ソファから崩れ落ちる。次に床に倒れたところをカイに容赦無く踏まれる。

「冗談でもきもい!」
「俺のギョンスに触んじゃねぇ‼︎」

ギョンスもカイも、本当俺には容赦無ないよね…。

でも本当の恐怖はここからで、

「へぇーーーーー。」

殴られ踏みつけられた俺を、氷のようなベクが見下ろしていた。

「ちがっ、してないしてない、キスなんてしてません!冗談です!待ってベク!」

「おやすみチャニョル。明日早いだろ、早く寝ろよ。ギョンス、今日一緒に寝よ。」

「待って明日からしばらく会えないから、」

そう明日から数日だけど、俺だけ外国行っちゃって会えない。だから今夜は2人でラブラブしたいのに返ってきたのはたった一言。

「だから?」

パタリと閉まる扉を前に、後ろからは。

「「自業自得」」

本当みんな容赦無い…。






あれから数日。異国の地から一生懸命メールをするも、全く返信ナシ。帰国してすぐ話したかったけど、仕事でバタバタしてなかなか2人きりで話せず、ようやく今にたどり着く。

手には異国で手に入れた貢ぎ物。

「これね、向こうのお祝いのお菓子なんだって。でね、これが撮ってきた写真で、、、」

どんなに冷たい視線が槍のように降ってこようが。ここで諦めたらダメだ!と自分を叱咤して話し続ける。

するとベクがようやく口を開いてくれる。

「なぁ、なんで怒ってるかお前わかってる?」

「俺がギョンスにキスしようとしてると思ったからでしょ?」

「はぁ……このバカ犬」

「?」

「お前は誰のもの?」

「ベクの。」

「じゃあ他の奴に俺しか知らない顔見せるな。」

「?」

「だからキス顔も、そのあほ面も俺のなんだから、他のやつに見せるな。」

「………!!ごめんなさい。」

「それから、される側の気持ちが知りたいなら俺に言えばいい。」

意外なベクの独占欲に嬉しくなって、見上げると、椅子から立ち上がったベクが目の前にきていた。

「ベク、」

言いかけた言葉がベクの唇で塞がれ、驚きに目が閉じられない。離れていく唇を目で追っていると、

「で、どう?」

とベクの唇の縁がゆっくり上がる。

「なんなら夜の営みも、される側体験させてやろうか?」

言われた言葉にはっとして、立ち上がってベクを抱きしめる。

「ううん、それはダメ。だってベク抱きたいもん。でも、ベクはしたい?」

「いやしたくない。で、キスは?」

「すっごい新鮮!なんかすごい嬉しくて、心臓バクバクいってる!ほら、わかる?ベクかっこいいからドキドキしすぎて心臓イタイ。」

「お前はしゃぎすぎ。じゃたまにはな。」

「えーー。」

「だってこんなバクバクいってたら心臓に悪いだろ。お前には長生きして俺の老後見てもらわなきゃ。」

「待って!ベク先逝っちゃったら、俺どうすればいいの?」

「大丈夫。お前間違いなくそのショックで心臓麻痺起こして死ぬから。」

「あ、そだね。」

笑いあって、ベクに自分からキスする。

「その顔好き。」

離れた唇からベクがつぶやく。

「お前が俺にキスする時、満面の笑顔で目をつぶる、その顔が好き。だから、キスはやっぱお前からしろ。」

…………………‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎ッ

「ベクちゃーーーーーん!大好き♡好き好き大好き♡♡♡♡」

ああ、なんて可愛くてかっこいいんだろ。

「俺も好きだよ。大好きかはその時々だけど。」

「今は?」

「大好きかな?さっきまでちょっと好き位だったけど。」

「じゃあずっと大好きが続くように俺頑張るね!」

「わかったから、とりあえず、それ食お?せっかくだしギョンスにお茶いれてもらってみんなで食べようぜ。」

リビングに行くと、寛いでいたギョンスがこちらを見て、

「良かったね。仲直りしたんだ。」

「うん!もぅね、ベクの愛の深さに「ギョンス、これみんなで食べよ。お茶淹れて。」

「わかった。」

俺を置いてさっさと支度が始まり、あっという間に賑やかになる。
食べたお菓子はひどく甘くて、今の俺の気分みたいだった。

「歯が溶けそうに甘い。」

横でベクがその甘さにウェッて顔をするのを見て苦笑いするけれど、そっと耳に唇を寄せて囁く。

「じゃあ、後で口直しに俺はどう?」

すると、ブラックコーヒーの香りをまとったベクの声が、優しく返される。

「お前まで食べたら骨まで溶けるな。

でも

甘いものは嫌いじゃない。」

ベクのビターな唇と俺の甘い唇が合わさるのはもう少しあと。







これからもずっと俺を独占してね。

大好き、ベク。


end

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