Kiss
□Kiss?:eat up ver.
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俺は唇が弱い。というより、口そのものが弱い。
歯医者とかでも口に触られると、なんだかむずかゆく、落ち着かなかった。
だけど最近、特にひどくなっている気がする。
ルーハンとキスすると、軽く触れるだけでも、体の芯を撫でられたみたいに熱が走ってしまうし、口の中まで触れられれば、もう芯まで溶けて自分をうまく制御できない。
だからできるだけ触れて欲しくないのだ。
「ねぇーシウちゃん、その手どけて。」
「やだ。」
「それじゃキスできない。」
「しなくていい。」
さっきからこんなやりとりをしているのに、向かい合ったルーハンは俺を面白そうに見下ろしている。
俺はと言えば、逃げ場のない狭いベッドで、まぬけだけれど両手で口元を隠してわが身を守るのに必死でいる。
「だーめ。俺キスしたいもん。それに、今日あいつら仕事で遅くなるじゃん。イチャイチャしたい。」
今日、同室のメンバーは別の仕事で遅くなる。だから、一緒にいたら余計グズグズにされてしまうからダメなのだ。
「これちゃんとみたい。」
今度出させてもらえる事になったMVの台本を指して言っても、
「だめ。それもう、すごく見たじゃん。」
とポイッと放られてしまう。
「シウちゃん、俺にひどいことさせないで。」
満面の笑みを浮かべて口元を覆った指先に舌を絡め出す。ひどいことって何?と身を竦めて問えば、
「うーん、例えばキスさせてくれない意地悪なこの手を縛り上げるとか?」
優しいけれど強い力で手首に指を絡められ、ビクリと身を強張らせる。
「ふふ、大丈夫。手をどかしてくれたらしないよ。」
「どかしても、深くキスしない?」
「わかった。だけどどれくらいから深いになるの?」
新しいおもちゃを見つけた子供みたいに目を輝かせて聞いてくる。問われると、自分にもどこからが深いのかよくわからない。
「…わからない…。」
「じゃあ、深いとこまできたら教えてね。そしたらやめたげる。」
【Kiss?】eat up ver.
「ひぁ、!」
「まだキスしてないよ?」
唇を指でなぞられて、思わず声が漏れる。ルーハンの唇は、柔らかく俺の頬を食んでは口づけ、俺の唇には触れていない。
だけど耳に噛みつかれたり、まぶたに口づけられたり、それだけでも体が震えるところに、指先が唇を愛撫するみたいに撫でて声が止まらなくなる。
「やぁ…あ、ルーハン…、」
指先もその指によって違う感触で、小指に掠めるように下唇をなぞられるともどかしくてもっと欲しくなってしまい、薬指と中指に唇を開くように上唇を押し上げられるとゾクゾクして唇を開いてしまう。弾力を楽しむように親指と人差し指が唇を挟めば、飴を欲しがる子供みたいに口の中が濡れて、溶けていく。
「んんぅ、はふ、」
口の端から零れてしまった唾液を塗りつけるように親指が唇をなめす。
「シウちゃん、可愛い。」
気づけばルーハンが愛おしそうにこちらを見ていて、恥ずかしくて背を向ける。
だけど、指はあいかわらず唇を捉えていて、後ろから抱きすくめたまま唇に指を差し込んでくる。
「はあ!あぅ、んうぅっ!」
人差し指が下顎の裏をなぞりあげ、舌の付け根に沈められる。
「ああ、ふ、あふ、」
閉じられない口からルーハンの指を伝って、溢れる唾液と喘ぎ声が止められない。
「シウちゃん、口好きだよね。こんなに溢して、可愛い。」
言われた言葉にゆるく頭を横にふるが、振った自分の動きで口の中の指が動き、また声と唾液が溢れてしまう。
「もっと可愛がってあげる。」
指を増やされ、2つの指先がバラバラと口の中を混ぜる。上顎の裏を爪でひっかかれると、快感が背筋を走りあげ、涙がこぼれてくる。ときどき舌を絡め取られ、クチュクチュと淫らな音を聞かせるみたいに揉まれて、その音に恥ずかしいのに感じてしまう。
「やあ、ん深、い、ルー、ハ…やめ、」
「ダメだよ。まだキスしてないよ。」
後ろから首筋をカプリと噛まれて、意地悪な声に制される。きっと、酷く綺麗な、楽しそうな顔で笑っている。
「も、や、指、嫌、キスして、…。」
指で口の中をグチャグチャに溶かされ、おかしくなりそうでこわい。それにキスと違って自分だけ熱に浮かされているのがせつない。
「どうしようかな?さっきシウちゃん俺になかなかキスさせてくれなかったし。」
まだやわやわと咥内を嬲りながら返されるルーハンの言葉に、ただただ懇願する。
「お、ねが、んぅ!…い、」
グチュグチュと咥内も唇も犯されて、涙も唾液も止まらない。
「おね、がぃ、ルー、ハン…、」
「じゃあ深くキスしてもいい?」
「い、からぁ、」
グチュリと口から指が抜かれて、深く口づけられる。指でずっと愛撫されていたせいでいつもより敏感になった口内を、深く入りこむ舌に思うままに貪られる。
与えられるキスと抱擁に熱が止められず、溢れる蜜が下着を濡らしていく。
「可愛い、シウちゃん。キスだけでいっちゃったの?」
恥ずかしいことを言われているのに、そのために離れた唇のほうが心を占め、自分からルーハンの唇を塞ぐ。
あわさった唇を通してルーハンが喉奥で笑うのを感じながら、甘く淫らな口づけに夢中になる。
たぶん、
きっと、
弱いのは、
唇じゃなくて、
ルーハンに。