Kiss

□He Wolf
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『赤ずきん、気をつけなさい。狼はいつだって飢えてるの。ほら、唸り声が聞こえるでしょ?お腹をすかせて、あなたを狙ってるの』






「イタッ!」

「ギョンスヒョン、どうしたの〜?」

「ううん、なんでもないよ。」

心配そうにこちらを見るセフンに笑顔で答えながら、そっと熱く熱を持つ肩を押さえる。痛みをこらえるように、深く息を吐いた瞬間、押さえた手に唇を寄せたジョンインが、

「大丈夫?」

と後ろから覗き込んでくる。痛みの原因を作った張本人なのに、悪びれもせず、むしろ楽しそうに唇に笑みをのせるのが、腹立たしく、

「大丈夫だよっ。」

きつく言って、払う。それでも楽しそうに耳元に唇を寄せて、

「だって、ギョンスが悪い。ギョンスが美味しいから、止められない。」

僕が弱いのを知ってて、わざと甘く囁く声を、ジョンミョニヒョンの明るい声が遮る。

「さぁ!みんな出番だ!今日も最高のパフォーマンスを見せるぞ!WeAreOne!」

「「「「「WeAreOne」」」」」



【He Wolf】




無事パフォーマンスも終え、宿舎に帰って各々のんびりしていると、

「あれ?ギョンス、なんか肩んとこ血ぃついてるよ。」

ベッキョンに言われてみれば、パジャマの肩に血が滲んでいて、慌てて隠す。たぶん、さっきお風呂に入った時に傷が開いたのだろう。

「あれ?なんだろ?ちょっと見てくる。」

「俺見たげよっか?」

「大丈夫。俺が見てやるから。」

お風呂から出てきたばかりのジョンインが無愛想に言い放つ。心配そうなベッキョンが僕に目を向けるけれど、そんなことも気にせず、ジョンインはさっさと僕を自分の部屋押し込む。

「ちょっ、ベッキョンが変に思うだろ!」

「変?ギョンスは俺のなんだから、変じゃない。それより見せて。」

僕の言ってることも聞かずに、襟をグイッと引っ張って傷口をみる。

「あー結構深いね。痛そう。」

「お前が噛むからだろ!今日だって衣装が擦れるたび痛かったんだぞ!」

「じゃあ癒してあげる。」

そう言って、傷口に舌を這わせながら、器用にボタンを外す。

「やっ、イタィ、やだってば、イアッ!」

拒絶を口にした途端、牙が傷口に食い込む。

「ヒッ、痛い、やめて、ジョンイン、いたぃ、ハァッ、」

「痛い?ハハッ、可愛いね、ギョンス。もっともっと痛くしてあげる。」

傷口に深く口付けるように舌を這わせながら、胸や下を触られると、もう痛いのか、熱いのかもわからなくなる。

「んんぅ、ヒゥ、はぁ、」

胸の突起をジョンインが柔らかく潰す。
その手はひどく優しく触れるのに、その牙は変わらず肌に食い込み、思考がどんどんおかしくなる。

優しい愛撫に溶かされて、意識がとろりと蕩けそうになるたび、酷い痛みに覚醒させられる。何度も何度も繰り返される痛みと快楽の波に翻弄されて、感覚が麻痺していく。

「も、ぉ…ねがぃ、酷…しないで……ジョンイナ、優…し、く…して…」

もうどれくらいこうしているのか。蕩けた体がジョンインを求めてたまらず、懇願すれば、すっかり熱くなった体の奥を、優しくほぐしていたジョンインの指がゆっくりと抜かれる。痛みと快感に零れた涙を舐めとる姿は、舌なめずりする獣のようで目が離せない。

「可愛いギョンス。ギョンスで俺を満たして。」

すぐに、深くまで押し入ってくるジョンインを中に感じて、無意識にもっと深く受け入れようと足を絡める。

「はぁ…は、ギョンス、やらしい。俺のこと好き?」

「ふぁっ、あっ、あぁ!」

「好き?」

「あ、好きっ!あんっ、す、きぃ、」

溶け出す思考に意識を手放そうとすると、また鋭い痛みが肩を襲って許してくれない。

「好きだよギョンス。俺から目を離しちゃダメだよ。」

「イ…タィ…ジョン…ィナ…」

「その目…たまらないね。俺だけを見て」

深く、深く、体に痛みと快感が貫いていく。互いに求めるままに与え合い、やがて満ちていく熱を体の奥に感じながら、ギョンスも熱を解放する。



荒い呼吸を落ち着かせるように肩口に顔を埋めていたジョンインが、肩の傷に優しく口付ける。傷口を愛おしむように触れられ、痛いはずなのに胸が締め付けられる。

「愛してる」

傷口に唇を触れたまま囁かれ、その傷口から言葉が体に染み込む。

「僕も」

「こんなに酷い男でも?」

「酷いジョンイナも優しいジョンイナも。でもあんまり噛んじゃだめ。」

「無理。だってギョンスは美味しいから。我慢なんて出来ない。それに…」

「それに?」

「ギョンス、噛まれるとすごく感じてる」

かぁーっと自分が赤くなるのがわかる。返す言葉が浮かばず唸れば、

「ギョンスのgrowlは俺だけのだね」

嬉しそうなジョンインの胸元に顔を埋めて、明日もまた痛むだろう傷にため息をつく。
甘く熱を持って疼くそこは、ジョンインの囁きのようで、たちが悪い。
それでも熱を感じるたびに傷口に染み込んだ愛情を感じ、痛みを感じるたびに心に食い込むような強い想いを感じるのだから、もうどうしようもない。

「ジョンイナのgrowlも僕だけのだろ。もし僕以外を食べたら、おなかに石を詰めて川に沈めてやる。」

「怖いな。でもそんな日はこないよ。だって俺が飢えを感じるのはギョンスだけだし、それを癒せるのもギョンスだけだからね。」



お互いクスクス笑いながら、幸せな余韻に身を委ねる。







『お母さん、狼は生涯、たった1人のつがいだけを愛するのよ。それってとっても素敵なこと。もしそれが手に入るなら、食べられる痛みも幸せだわ』












おまけ

「あれ?ジョンミョニ、チェン、今日はこっちで寝るのか?」

「クリス、ごめん。今日もマネヒョン帰ってこないよね?うちの可愛い狼君が赤ずきんを離さないだろうから、今日はこっちで寝させて。」

「クリスヒョン、ごめんなさい。お願いします。」

「あぁ。俺は気にしないから大丈夫。マネヒョンは今夜帰れないって言ってたからそっちのベッド好きに使って。」

「ありがとう」
「ありがとうございます!」




.....................................................


「ベッキョン、それなに?」

「軟膏」

「怪我でもしたの⁈」

「チャニョル、落ちつけ。俺じゃない。」

「あー…ギョンス?」

「そっ。明日塗ったげないと。今日も痛そうだったし。まったく、カイは手加減っつーもんがわかってないんだから」

「うふふー僕は心得てるでしょ♡」

「バッ、バカニョル!寝るぞ!」

「うふふーおやすみー♡」

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