Back at one(with Changjo 2015.8.19 up
□Nine
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Changjo * side
「待ってて欲しい」も「迎えに行くから」も言える立場にない事は分かってた。
発展途上の自分たちにできる事は、とにかく高みを目指す事だけ・・・その場所でなら、もしかしたら・・・
スーツケースを預けて、出発ゲートに向かうまでの間、売店を見て回っていた。
「ジョンヒョン、これどう?」
一緒にくっ付いて見ていたメイが、可愛らしいパッケージを指差した。
「これ、何?」
「チョコレートだよ。探してるんじゃなかったの?」
呆れたような顔に、今日は濃い目のメイクをしている。ショーのリハーサルを終えて、大慌てで空港に来たらしい。偶然にもアンバーのリムジンが玄関に横付けされたのを目撃してかなり驚いたけど。
「これ、お土産で人気なんだって。パッケージも可愛いからきっと喜んで貰えるよ」
可愛いの基準はよく分からないけど、きっと女性が見て可愛いものは間違いないんだと思う。
「飛行機の中で食べるものは買わなくて良いの?」
「機内食が出るよ」
「食事じゃなくてお菓子とか、要らない?」
要らない。
首を振ったら、
「あ。じゃあこれあげる」
ジャケットのポケットから、ミルクキャラメルの箱を取り出した。
「食べかけ?」
「い、いいでしょ!美味しいから、持って帰りなよ」
スクール帰りに遭難しかけたときを思い出す。
「私は、あげられる物ってないから・・・」
ちょっと神妙な顔をしたから、唇を狙って顔を近付けたら
「無理!」
かなりの力で、向こうへ押しやられてしまった。
「無理って、みんなしてるじゃん」
出会いにも別れにも挨拶にも、キスがつきもののような国なのに・・・周りを見た彼女が、少し頬を上気させて
「だからってここでは無理!」
じゃあ、ここじゃなかったら良いのか?
「あ。そう言えばアンバー達の話って、してなかったよね?」
「達?」
パタパタと手で顔を仰ぎながら
「そう。アンバーとクリスはね、スクールを卒業したら2人でこの国を出るんだって」
「・・・は?」
「やっぱ初耳?何処だっけ?同性婚が認められる国に行きたいんだって言ってた」
それは恐らく、周りの祝福は受けられない駆け落ちも同然の行為ではないのだろうか?
ここに居れば、間違いなくそう時間も掛からずトップに辿り着けるような容姿と実力を持っている筈なのに。
「僕の幸せは、クリスと共に在るから〜だって」
「ある意味格好良い」
「腹も立つけどね・・・」
遠くを見ていた瞳が此方を向く。
「ねえ、ジョンヒョン。ブロードウェイの批評家達が私達東洋人を見て大体決まって言う言葉が有るのを知ってる?」