Seven colors , first impression

□明日。
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エレベーターに乗り込む見慣れた黒髪。



今日は、独り。




彼はそろりと管理人室を抜け出した。
足音を忍ばせて、階段の奥の部屋を目指す。
このビルには、人を運ぶ目的以外の小さなエレベーターがひとつ存在する。
もともと出版社がテナントとして入っていた頃設置された物で、主に書籍や書類を運搬する役目を担うものだった。

耐荷重は80kg
彼の体重は、それにギリギリでエレベーターはいつも抗議の悲鳴を上げながら彼を6階まで運んでいた。

廊下の隅の、明かりの漏れる部屋。

汗ばんだ右手に持つ「狂気」を握り締める。






君がいけない。
僕が悪いんじゃ無い。





ドアをノックする。
今日は、出てくるまで叩き続けるよ。
もし出てこなかったら、蹴破るまで。

出ておいで。
出ておいで・・・

呪文のように心で唱えながらドアを叩き続ける。

しばらくして、ドアに耳を付けて反応を伺う。
いつも面白いくらいに恐怖が感じ取れるのに、今日は何も感じない。

居ないのか?
いや、確かに入る人影を見た。

ドアノブに手を掛けると、すんなりと回った。



ギイ、と木が鳴る。
蛍光灯の明かりの中に浮かぶベッド。
白いシーツの膨らみ。

疑わなかった。

彼女はいつも蛍光灯を付けて就寝している。
それが自分の与えている恐怖によるものだと思うと、やたら可笑しく思えた。

近付いて、布団に手を掛けた・・・















「マネヒョン」

言われてハッと声のする方を見る。
大きな瞳が、じっと自分を見ていた。

「何、してるの?」

「・・・」

視界の端の白い物が動いた。

反射的に見ると、不信感をあらわにする瞳。
彼の良く知る少年達が、彼の動きを待っていた。
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