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□月夜に猫を憂う。
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少し小ぶりなそのケーキにフォークを差し、口に含めば甘すぎない程よい旨味が広がった。

・・・あ、おいしい。

ふと視線に気付けば、紅茶を飲みながらこちらをニヤニヤと見つめる黒尾が居た。


「美味しいんだろ?一口くれよ。」

あーんと、口を広げる黒尾をじとっと睨む。

男同士でこんな店に2人で入っただけでも目立っているのに、この人は馬鹿なのか?

「僕、美味しいなんて言いました?」

「分かるよ。美味しいって、顔したろ?」

そう言われれば、どんなに隠そうとしたってカッと赤くなるのを隠し切れない・・・


誤魔化しきれないと思いながらも、苦し紛れにまたも可愛くない口を開く。

「というか、小腹が空いてこの店に入ったんじゃないですか?なんで飲み物しか頼んでないんですか。」

良い香りを漂わせながら紅茶のカップをカチャっとソーサーに置く。

「ん?ああ・・・でもケーキ美味しかったろ?」

「・・・答えになってないんですけど。」

「そういうことだよ。」

「・・・・・・。」

「ツッキーが喜ぶかなぁー・・・と思って、な?」

「・・・はぁ!?」


嘘だ。

何言ってんだこの人。

いつもいつも冗談めかして近寄ってきて。欲を吐き出すだけ吐き出したらハイお終いだった人が・・・

でも・・・それでも。

この単なるきまぐれかもしれないこの人の言動ひとつひとつに嬉しくなったり、哀しくなったりする自分がいる。

僕は最初から・・・振り回されてばかりだ・・・

思わず、涙が溢れそうになり、誤魔化すように残りのケーキを一気に食べた。

「あ〜あ、結局くれねーの。」

と、全く残念そうにしないこの人の気まぐれにやっぱり俺は振り回されてばっかりだ。


「ね。ツッキー、それわざと?」

「はぁ?何がですか?」

「天然か、おお〜怖いね〜。」

「意味わかんないですけど。」

「いいんだよ。さ、行こうか。」

するりと立ち上がって伝票を持って行くその後姿を追いかける。あっという間に会計を済ませ、ちょっと気まずい思いをしながらもお礼を述べれば、店を出る際に、

「じゃ、早くツッキーを食わせてよ。」

とぞくりとする声で囁く。


自然と腕を引かれて早足になる。


「あ・・・の・・・ちょっと、黒尾さん、目立ちますよ。」

「もうこんな通りだから誰も気にしねぇよ。」

周りを見渡せば、いつの間にか昼間だというのにホテル街のど真ん中で・・・引かれていた手は指を絡められ、しっかりと握られていた。


ホント・・・今日は一体何がしたいんだ、この人・・・




近くのホテルに入り、部屋に入ると、ドアを閉めるなり、その扉にどんと縫い付けられた。

気がつけば唇を奪われ、舌を絡めとられ、身動きとれないように顔を両手でしっかり固定されていた。

「・・・んっ・・・ふう・・・」

足の間に黒尾さんの右足が差し入れられ、高ぶりをごりっと刺激された。

「・・・あれー?ツッキーもうこんなに興奮しちゃってんの?そんなにヨカッタ?」

いつもより少し余裕のなさそうなその笑みにきゅんと胸が締め付けられる・・・そんな表情をされると勘違いしそうになる・・・

まるで、自分が愛されているかのように・・・






なんだか急に悔しくなって、ドン!と黒尾を突き放す。


「・・・はぁっ・・・!」

「・・・なにー?機嫌損ねちゃった?」

ごめんごめん。

そう言って俺の頭を撫でるその手つきが予想以上に優しくて・・・

虚勢を張ることも忘れて、羨望の眼差しで黒尾を見つめる。


「・・・だーかーら、ソレ。最近やってるけどさ、無意識?」

「・・・え?」

「全く。クールに振舞ってるけど、君。天然すぎるからね。」

その言葉の意味についていけずに目を見開いていると、腕を掴まれ、ベットに放り投げられた。


ギシー・・・


気がついた時には既に黒尾は自分に覆いかぶさっていて、顎をしっかりと掴まれる。


「今日こそ、素直にしてやるからね。」


眼鏡を取られ、ぼやける視界に戸惑っていると、快感が降ってきた・・・





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