お題SS
□変態に恋されてしまいました5題
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腐っても変態でも上忍は上忍。
下忍ズの攻撃など軽々避けると、そろそろ演習始めるぞ!と、何事も無かったようにナルトに教えれば、ナルトは張り切って頑張るってばよ〜!と一目散に演習場へと駆けていく。
簡単に避けられてしまった下忍達は演習再開する前からヘトヘトである。
…さぁ、行くか。と、歩を進め始めた集団に向かってカカシはポツリと呟いた。
「…お前らのように、ナルトを認めてくれる人達が増えてくれると良いな」
嬉しくも切なげに囁かれた声色に、少年少女は発した大人へと視線を向けた。
…その言葉に隠された皮肉を皆、知っている。
…ナルトへ対する、一部の忍びや里人の態度を。
「…あいつはバカみたいに真っ直ぐだけど、でも…人の気持ちに敏感だから、甘えられる大人ってほとんどいないんだよね〜」
里人の態度に腹を立てたのは、皆…一度二度では無かった。
そのたびに、寂しそうに笑うナルトの笑顔を何度も見てきた。
「だから、俺はナルトにとって安心して甘えられる大人の一人になって。これから先、あいつを認める大人が出来た時に怖がってしまわないよう…。お前を認めてる大人はちゃんといるんだぞ!って、あいつに伝われば良いなって思ってるわけよ」
そう言い、にっこり笑う上忍に…
あれ?俺達、何か変な勘違いしてたんじゃね?
カカシのナルトに対する気持ちは、ただ純粋に大切な部下であって…ナルトの特殊な境遇ゆえに過剰なスキンシップを取っていただけなのかもしれない…。
そんな見解が下忍の脳裏に浸透・定着する直前に響き渡ったナルトの黄色い歓声!
「イルカ先生!どうしたんだってば?」
突然演習場に現れた大好きな中忍・イルカを見つけたナルトは毎度のごとくイルカの胸元へと飛び付いていった。
その直後、体感温度が5度は下がった下忍の周辺。
もちろん、先程までの優しげな雰囲気は何処へやら…瞬く間に殺気をぶちまけ始めた元暗部のせいである。
「…う〜ん、でもアレは…くっ付き過ぎだよね〜?」
ぽそっと呟く殺気噴出人間に
(あんた、もっとくっ付きまくってるじゃんッ!)
と、心の中で突っ込む下忍ズ。
声に出さなかったのは賢明な判断である。
「俺まだ、無条件でナルトから抱き付いて貰った事ないんだけど、あれ…ほんと、ずるくない?」
(ちょッ!カカシ先生、何で手にクナイ握ってんのッ!?)
「ナルトの特別は、俺だけで十分だと思うんだよね〜」
(聞いてたんかいッ!!!)
「…う〜ん、ヤッちゃおうかなぁ…」
(その≪ヤ≫の部分は何の≪ヤ≫なんだッ!?)
「ナルト〜!失敗なんかしてないかぁ〜?」
「何言ってんだってば!イルカ先生!俺ってば大活躍するんだってばよ!」
見ててくれよ!と目をキラキラ輝かせるナルトに対し、嬉しそうに頭を撫でるイルカ。
ほのぼのとした光景を前に、ギリギリと響き渡る某上忍の歯ぎしりの音。
「…ん?ナルト?頬にゴミが付いてるぞ?」
全力KY元教師が元教え子の頬に手を添えた途端に、ポスンッと下忍の前から消えた現上司。
(ギャ〜っ!!!!!)
「「「ナッナルト〜ッ!!!」」」
少年少女の危機迫る悲痛な叫び声に、何事かと後ろを振り向いたナルト。
イルカからナルトの視線が外れた直後、イルカの背後に現れたのは…クナイをイルカの首元に付き付けた上忍・はたけカカシである。
(あんた、真昼間から仲間を暗殺する気かぁ〜ッ!!!)
「あれ?カカシ先生?」
殺気をイルカに発しながら、イルカをジッと見据えカカシは言葉を放った。
「…イルカ先生、あまりナルトにくっつかないでください」
「へ?」
「移ります、変態が。」
「「「変態はあんただろうがぁ〜ッ!!!」」」
下忍の飛び道具攻撃がカカシに向けて一斉に投げられたのだった。
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