お題SS
□変態に恋されてしまいました5題
19ページ/19ページ
「俺上がったから、先生も風呂入って行けってばよ!」
濡れた髪を拭きながら、先生の上の空な意識を俺に向けさせてから要件を伝えた。
「もう上がったの?ちゃんと身体温めたのか?」
「むしろ長風呂し過ぎて暑いってば!」
先生ってばどんだけぼけ〜っとしてんだってば?なんて聞けば、困ったようにハハハッと笑いながら…じゃあ、お言葉に甘えてサッパリしてくるかぁっと準備し始めたカカシ先生。
俺は冷蔵庫から牛乳を取り出しコップについで乾いた喉へと一気に流し込んだ。
…ふと感じる視線。
目を向ければ、服を持ったまま壁にもたれかかりながら無表情で俺を見てるカカシ先生。
…そういえば、最近…写輪眼出してないってば。
「…どうかしたってば?」
写輪眼を出さなくなってからかな?
上の空かと思えば、こうやって俺をただ見てくるカカシ先生がいる。
…でも、話しかけると…何でもないよ!ってカカシ先生は微笑むんだ。
その笑顔が…なんだか悲しそうに見えるのは、
俺の…気のせいなんかな?
「…あ。…ナルト?頭まだ濡れてるぞ?」
俺の肩に掛かってたタオルを手に持つと、俺の頭をワシワシ拭いてくれてるカカシ先生。
…先生。
…俺ってば、怖いんだ。
「ちゃんと拭かなきゃ風邪引くぞ?」
先生にとっては些細な事かもしれない。
だけど、俺にとっては…もう…。
「…よし拭けた!ナルトの髪はやっぱりフワッとしてなきゃな!」
水気が取れてボリュームが戻った俺の頭に手を乗せカカシ先生は優しく微笑む。
「触り心地も問題無し!ナルトは今日も食べちゃいたいくらいに可愛いな!」
「可愛くないってば!俺ってば男前なの!」
「ん〜?そうか〜?」
「そうか〜?って、カカシ先生ってば、失礼だってばよ!」
こうやってカカシ先生とワイワイやり取りするのとか、俺にとっては大事な一瞬で。
嬉しいから楽しいから、…だから。
俺は、それを失うのが怖い…んだってばよ…。
「さて、風呂行ってくるわ」
…あ。
ほら、まただ。
背中を向けたカカシ先生を見ながら、俺はチクンと胸に響いた痛みと向き合う。
…なぁ、カカシ先生?
どうして…
どうして…
ふとした瞬間に…
カカシ先生の笑顔が…
辛そうに見えてしまうんだってば…?