OP小説

□ひろいもの
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「お前、名前はなんだ?」
「エル」
「そうか。」
そう言ったところで、子供のお腹が盛大に鳴った。
「フッ、飯食いに行くか?」
ローが笑ってエルに言うと、エルは頷いた。ローは立ち上がると、エルを抱き上げ、食堂へ向かった。


食堂のドアを開けると、そこには休憩をしているクルーが何人かいた。
「おい、子供向けのスープを作ってくれ。なるべく熱すぎない熱さでな。」
ローはコックに言うと、空いている椅子に座り、自分の膝の上にエルを座らせた。その様子を見ていた周りのクルーは、
(お、おい!一体何が起こっているんだ?)
(しらねぇよ!)
(でも、船長があんな穏やかな顔をするなんて思っても見なかったぜ。)
と思っていることなど、つゆも知らずに、エルをだいていた。するとそこに、ペンギンとシャチが入ってきた。
「船長!その子供、元気になったんですね。みんな、どうなったか気になっていたんですよ。」
「そうか。見ての通りだ。今はもう、腹が減って仕方が無いらしい。」
そうローが言うと、それまで黙っていたシャチが急に前に出てきた。
「船長!なんであの時、俺が海に落とされたんですか!?」
「それ以外にこいつを安全に引き上げる方法が見つからなかったからだ。」
そう言うと、ペンギンは、諦めろというかのようにシャチの肩に手をおいて、首を横に振った。

そうこうしている間に、ローのもとへスープが運ばれてきた。ローはスプーンに少しスープをつぐと、エルの口へと運んだ。エルは大きく口を開けて、スプーンを丸ごと口に含んだ。
「うまいか?」
ローが尋ねると、エルはニッコリ笑った。それにつられるように、ローも微笑んだ。
「そうか。じゃあもっと食え。」
そう言って、またスープをエルの口に運んでやった。

エルは、スープをキレイにたいらげると、ローの胸に頭をもたれかからせた。だんだんまぶたが重くなっていくエルを見て、ローはそのまま食堂を出た。


自室に入ると、ローはエルを寝かせようとしたが、あまりに強くローの服をつかんでいたので離す事ができなかった。仕方なく、ローは自分も布団に入ると、エルの頭の下に自分の腕をあてがってやり、目を閉じた。

何も言わずに食堂を出て行ってしまったローを見たクルーたちは、しばらくしてローの部屋へと向かった。何も音がしない部屋のドアを開けると、まるで兄妹のように一緒に寝ている、ローとエルのすがたがあった。
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