君が照らしてくれた道
□スタートライン
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趣味程度と言いながらも、休みが合えば必ずスタジオに集まって練習する日々。
1ヶ月に一度はライブを行う。
最早趣味とは言えない域まできていた。
そしてとある日のライブ終わり、ライブハウスのオーナーに引き留められたPiece of Loveのメンバーは楽屋に集まった。
「ワンマンやってみないか?」
「え?」
「ワンマンライブ。もう対バンじゃ、客パンパンで収まらないんだわ。」
他のバンドを見に来た客も、Piece of Loveが終わるまで帰らないので、小さなライブハウスには収まりきらなくなってきているのだ。
特に活動の告知はしていないにしても、ほんの少しの間でも芸能界にいた詩音がヴォーカルともなればたちまちそれは口コミで広まり、高校時代からバンドのファンだった客も押し寄せるほどだった。
また男性陣のビジュアルもかなりレベルが高いため、半分以上が女性客で溢れる。
「まぁワンマンでもうちみたいな小さいとこじゃすぐいっぱいだろうけどな。もう少し広いハコでやったらどうだ?」
「俺たちにとっちゃここは高校時代からの思い出の場所だし、ずっとお世話になってるからここでやりたいんです。」
「でもオーナーに迷惑かけるわけにもいかんし。」
「えー!せめて初めてのワンマンはここでやりたい!」
竜也と隆平の軽い言い争いが始まる。
「ワンマンかぁ。」
「なんや詩音、気乗りせん?」
「そうじゃなくって。なんか夢みたいだなぁって。結局あたしもツアーできずに終わっちゃったし。」
「ほんと、アタシ達がワンマンなんて信じられないよね。なんか怖いなぁ。」
「何言ってんの!みはるギターちょー上達したじゃん!今じゃ孝之にだって負けてないよ!」
「やろうや、ワンマン。俺達の夢やろ?」
「……そう、だね。みはる、やろう!」
「…うん!」
「おっしゃ決まり!じゃあオーナー、お願いします!」
ワンマンライブは半年後に決まった。
10年越しの夢にやっと届くところだ。