君が照らしてくれた道

□消えない過去
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「誰かヴォーカルやってくれるヤツいないかな。」

解散した後の帰り道、孝之は隣のクラスの彼女、めいに思わず愚痴をこぼす。

「う〜ん。ヴォーカルかぁ。」

孝之はまた大きなため息をつく。

「あ!そういえば!うちのクラスに凄く歌の上手いコいるよ!」

「コって、女子?」

「そう。あ、孝之くんのバンド、男性ヴォーカルがいいんだっけ?」

「別にこだわってるわけじゃないけど…」

「前にクラスの女子何人かでカラオケ行った時に歌聴いたんだけど、その場にいたコ達皆そのコが歌い出した瞬間黙って聴き入ってさ。なんかね、上手いってだけじゃなくて不思議と吸い込まれるカンジ。……って、素人の意見なんて当てにならないか。」

めいは苦笑いして自分が喋りすぎたことに慌てた。

めいは普段大人しくてあまり自分から話すタイプではない。
そんなめいに少し驚いた孝之だったが、本当に感動したように語る姿が見れたことが嬉しくもあった。
そしてそんなめいが興奮して話してしまうくらいなんだからきっと本当に感動したのだろうと思った。

「いや、実際聴くのは素人なんだから、めいの感じたことはすごく大事だと思うよ。それにその場にいた全員が固まるほどなんだから間違いないんだよ。」

孝之の言葉にめいがキラキラと笑顔を輝かせる。
孝之はそんなめいを心から可愛いと思った。

「俺も1回聴いてみたいな。明日紹介してくれない?」

「わかった!聞いてみるね!」

またとびきりの笑顔になっためいの手を握って、明日が来るのを楽しみに思いながら、孝之は夕日に染まる道をゆっくりと歩いた。
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