君が照らしてくれた道
□スタートライン
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俊介の結婚式は大成功。
花嫁が投げたブーケをキャッチしたのは、めいだった。
めいが幸せになればいいと、他のメンバーも心から祈った。
披露宴では計画通りサプライズで歌うと、新婦は涙を流して喜んでくれた。
披露宴が終わって、新郎新婦が見送りをする。
「今日は本当にありがとう。」
俊介も笑顔で喜んでくれた。
「詩音さんの歌、本当に嬉しかったです。感動しました。」
新婦が詩音の手を握りながら再び涙を流した。
「また詩音さんの歌が聞けるなんて。それも生で、私達のために…」
「ずっと応援していただいてありがとうございます。これからまた歌を続けていこうと思っています。今度は是非、ライブに来てください!」
「絶対行きます!」
その笑顔を、詩音は一生忘れないだろう。
例え世間がどう言おうと、自分を信じて待っていてくれる人がいる限り歌い続けなければいけない。
改めて実感した。
「あたし、やっぱりライブやりたい!」
二次会も終わり仲間と共に歩く帰り道、詩音は想いを口にした。
「え、アタシそのつもりでいたんだけど、今更?」
当然のように言うみはるだが、その顔は嬉しそうだ。
「よし、来週から打ち合わせせなな!」
「大倉にも連絡しとくよ!」
「オリジナルももっと増やさなきゃ!」
「ねぇ…昔の曲はやってくれないの?」
「え、でも……」
めいの提案に全員戸惑う。
「孝之くんの曲、また聴きたい。」
「いいの?」
「もちろん!孝之くんも、そのほうが嬉しいと思う。」
ブーケを抱えながら笑顔でそう言うめいは、確実に前に進んでいるようだ。
「よっしゃー!練習しまくるぞー!」
「オマエ結構酔ってるだろ?」
叫んで少しフラついた足で走り出した竜也の首根っこを掴んで、変な暴走をしないようにと必死に捕まえている雄一。
10年経っても変わらないそんな風景が、詩音にはとても心地よかった。