君が照らしてくれた道

□消えない過去
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高校2年、夏。

学園祭を間近に控えていた校内の慌ただしさ以上に、軽音部のメンバーは焦っていた。


「ごめん。」

学祭のステージが目前に迫っているというのに、組んでいたバンドのヴォーカルが家庭の事情で急遽抜けることになってしまった。

「しょうがないやん。オマエのせいやないんやから。」

「それより、早く病院行ってあげたら?おじさん、まだ油断できない状態なんでしょ?」

頭を深く下げるヴォーカルの彼に、隆平と竜也がフォローの言葉をかける。

彼の父親が体調を崩し入院した。
元々長男である彼が自営業の商売の跡取りをする予定になっていたが、父親の容態は思わしくなく、すぐに手伝いをしなくてはいけない状況下にあった。
バンド活動などしている場合ではない。

「でも、学祭は?」

「そんなこと心配すんな!ヴォーカルやりたいヤツなんて沢山いるんだから、すぐ新しいヤツ見つかるって。」

「もう一緒に音楽はできないけど、応援してる。本当にごめんな。」


彼が去った後、残されたメンバーは大きくため息を吐く。

「どうすんだよ。ヴォーカルぐらいすぐ見つかるなんて、そりゃあ志望者は山ほどいるだろうけど、実力あるヤツなんてそうそう見つかんないぞ。」

孝之が言った言葉に、竜也が眉を寄せて項垂れる。

「今年も優勝狙っててんけどなぁ。辞退するか?」

「辞退なんてしねぇよ!探す前から諦めんなって!」

「でもさ…」

「軽音部の他のヤツは使えんで。俺らのレベルについて来れるもんはおらんて。」

「だったら募集するしかないだろ!とりあえず各自いいヤツいないか探してみて。」

孝之の提案に竜也と隆平は黙って頷くしかなかった。
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